第4話

「何から何まで、ありがとうございました。今度こそ、帰ります。」

「どこに帰るんですか?」

「……」

「家はどこですか?」

「……」

「家出、ですよね?」

 言ってはいけないと思っているのに、口が勝手に動きだす。

「泊めて頂けないでしょうか……」

 やはり、困らせてしまったようだ。眉間にしわが寄っているのが分かる。

「信じて頂けないでしょうが、家出ではないです。本当です。

 とにかく、遠くへ行きたくて、電車に乗って、車窓から見えた綺麗なところで、降りたんです。ただそれだけです。

 一週間、いや、三日。今日を入れて三日。そしたら、必ず出ていきます。」

 私は腰を折り曲げた。この姿勢では見られないが、きっと困り果てているだろう。事実、黙っている。

「では、三日間、あなたは僕の同居人です。

 女の子を泊める、と言うのはよろしくないですので。」

「ありがとうございます。」

 さらに深く頭を下げた。

「そこのソファを使ってください。今日はだらだらしましょう。今日電車で見たものとか、聞かせてほしいです。」

 顔を上げたら、薄くて白いカーテンがオレンジ色に染まっていた。

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