第4話
「何から何まで、ありがとうございました。今度こそ、帰ります。」
「どこに帰るんですか?」
「……」
「家はどこですか?」
「……」
「家出、ですよね?」
言ってはいけないと思っているのに、口が勝手に動きだす。
「泊めて頂けないでしょうか……」
やはり、困らせてしまったようだ。眉間にしわが寄っているのが分かる。
「信じて頂けないでしょうが、家出ではないです。本当です。
とにかく、遠くへ行きたくて、電車に乗って、車窓から見えた綺麗なところで、降りたんです。ただそれだけです。
一週間、いや、三日。今日を入れて三日。そしたら、必ず出ていきます。」
私は腰を折り曲げた。この姿勢では見られないが、きっと困り果てているだろう。事実、黙っている。
「では、三日間、あなたは僕の同居人です。
女の子を泊める、と言うのはよろしくないですので。」
「ありがとうございます。」
さらに深く頭を下げた。
「そこのソファを使ってください。今日はだらだらしましょう。今日電車で見たものとか、聞かせてほしいです。」
顔を上げたら、薄くて白いカーテンがオレンジ色に染まっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます