第8話

 コンビニで菓子パンを買い込み、少しづつ消費していく生活に戻った。料理しても、食べてくれる人はもういない。あの人の家は掃除したけど、この家にはモノが散らばっている。あれっきりで、たった3日で、離れた。

 どこか遠くへ行きたい。変えてくれる何かがあるかもしれない。いつも通りの考えが頭を巡り、でも、どうやら私は違うみたいだ。


「どこか」を思っていたはずなのに、あの川の光を想い出す。まためぐり逢えるような気がする。この世は広いのに、そんなわけないのに、また会える気がする。

 私は駆け出していた。あの時はちょうどよかった服装が、今は寒く感じる。夜の電車は遅かった。今乗っている電車はもっと遅い。早くしてよ!


 駅名は覚えていなかった。風景だけが頼り、だけど、はっきり覚えているから大丈夫。


 あの日降り立ったあの場所で、私は萩森さんに出逢えた。

 適当に車を走らせていたあの場所で、僕は美麗さんに出逢えた。

 「きらきら」は、一層輝きを増していた。

 ただの川の景色なのに、綺麗だ。

 石畳の上に座る萩森さんは、「きらきら」よりもきらきらしている。

 川を眺める僕を見て、心から笑っていて、それは美しくて麗しい。


 私たちは、

 僕たちは、

 離れないんだ。

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紫田 夏来 @Natsuki_Shida

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