白亜の試練〜決められた結末〜(2)
アスティエ様の剣が眼前に迫った時、僕は剣を横に払い軌道を変える。
それと同時に剣を払った方と逆側に体を斜めに逸らした。
その直後、体スレスレのところをアスティエ様の剣が通り過ぎ、上手く避けることに成功した僕は続けざまに一撃をお見舞いする。
僕のとしては結構いい一打だったけど、アスティエ様には難なく防がれ、剣のかち合う音が響いた。
至近距離で対峙すれば、少し驚いた表情のアスティエ様と目が合う。
「やはり、自身の目で確かめることにしたことは正解だったようだ」
笑ってる?
笑顔とまでは言えないけど、アスティエ様の口角は少し上がっているし、瞳も以前よりイキイキしているように見えた。
「ラルト殿。力の出し惜しみなどしないでくれ。私は君の全力を図るためにこの場を設けたのだからな」
なんの説明もなく始まった試合だったけど、やっぱり何か理由があるらしい。
アスティエ様は剣を下ろし、よく通る低めの落ち着いた声で語り始めた。
「我々聖騎士は教会に所属するものとして、人々や世界に害をなす魔物の討伐や、黒魔術を使う異教徒の撲滅のために剣を振るってきた」
聖騎士は教会の騎士であって、国を守る騎士じゃない。
じゃあ、彼らは何を守っているのか。
聖騎士は神を信仰する教会の理念のもと教会の剣となり、大いなる闇から世界を守っているんだ。
その証拠に、彼らは神聖術を使い魔物を倒すことができる。
聖騎士になるには、強い騎士であることと精神力の発現が絶対条件になるんだよね。
その狭い門を突破して聖騎士団長にまでになったアスティエ様の実力は相当なものなんだろうなぁ。
「その中でも、我々の最大の目的は魔王の討伐。そのためならば、自身の命を捧げる覚悟ができている」
教会の敵、大いなる闇の最上位にいるのが魔王なんだよね。
魔王の討伐はどの国でも最優先事項だし、魔王の復活が予言されてから討伐後一年は、国同士の戦争が禁止されている。
この条約は教会の名の下に立てられていて、違反した国は今後一切の教会からの援助を受けられなくなるらしい。
過去にそんな国があったけど一年もしないうちに滅びたと、子供に約束事を守らせる時の悪例として使われているぐらい、違反なんてありえないことだけどね。
「だが、悔しいことに、我々の命をいくつ捧げようとも魔王を倒すことは不可能だ。ではどうすればいいのか。君にも分かるだろう」
分かっていてもやりきれない表情になってしまうアスティエ様の気持ちは、僕にも痛いほどわかる。
どうにもならないと頭では分かっているのに、諦めきれないことってあるよね。
アスティエ様は強いし、自分も他の人もそれを知っている。
条件さえ揃えば、きっとその思いは叶うんだけど、その条件が揃わない。
彼はそれをもう知っているんだ。
「聖剣の勇者を探すんですよね」
彼は自分が勇者ではないことを知ってしまったんだ。
ん? 待って。
聖剣がもう発見されたってこと?
いつ!?
そんな発表、僕聞いってないんだけど??
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