聖騎士団長さま(3)

 先に行ったミロさんとエリーさんを追って走ること15分。

 ようやく追いついた頃には、二人はもう仲間たちと合流していた。


 「遅かったな、のろま」


 待ちくたびれたと言わんばかりのエリーさんが、大きく伸びをする。


 「お疲れ」


 ミロさんはどこから持ってきたのか、飲み物が入ったコップを僕に渡してくれた。


 「ありがとうございます」


 長距離を走った後で喉が渇いていた僕は、受け取った飲み物を一気に飲む。

 んーっ!中身はよく冷えたレモン水だ。

 疲れが一気に吹き飛ぶ〜。

 全部飲み干して口をコップから話すと、同じ位置で待っていたミロさんがコップを回収してくれる。

 僕はもう一度ありがとうと言って、ミロさんにコップを渡した。


 「ん」


 コップを受け取ったミロさんは短く返事をして、仲間の方へ戻って行く。

 僕はミロさんを見送りながら、他の人に視線を合わせた。

 ミロさんとエリーさんの他に2人。

 一人は、肩まで伸びた黒い髪を花の髪飾りで留め、ハーフアップにしている女の子。

 年は12歳ぐらいかな?

 女性というにはまだ幼いように見える。


 「あの、な、何でしょうか?」


 女の子は僕の視線に気づいて、隣にいた背の大きい男の人の後ろに隠れてしまった。


 「ロダ。自己紹介くらいはしなくてはな」

 「は、はいぃ!」


 男の人に背中を押され、女の子が再び僕の前に出てくる。


 「ろ、ロダですぅ……。年は12で、身長は142cm、体重——」

 「コホン。乙女は体重、秘密」


 一生懸命自己紹介してくれたロダさんは、恥ずかしがり屋だけど一所懸命で色々川回っちゃうタイプの子なのかもしれないね。

 ミロさんがフォローに入ってくれて、何とか機密情報は守りきれて良かった良かった。


 「では、次は私の番かな」


 渋い大人の声が耳に響いてきたと思ったら、他の三人がシーンと静かになった。

 僕もその異様な空気を感じ、呼吸をするのにも気を使うように口を閉じる。

 一歩、二歩と近づいてくる彼の大きさに圧倒され、自然と体が強張った。

 背の高い彼を見上げるようにして見れば、背丈だけでなく体つきも屈強な騎士の熟練騎士の重厚感がある。

 間違いない。

 彼が、ミロさんたちが言っていた「団長」なんだ。


 「お初にお目にかかる。聖騎士団『白銀』の団長、アスティエ・ダ・エクシオンだ。急な呼び出しで申し訳ないが、こちらも時間に余裕がないのだよ」


 エクシオン団長は大きな体を綺麗に折り、丁寧に謝ってくれる。

 頭を下げたせいか、少し崩れたプラチナブロンドの髪を、エクシオン団長は自然な流れで掻き上げた。


 「では早速、本題に入ろうか」

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