聖騎士団長さま
薄暗い部屋がぼんやりと明るくなると、暗くて見えなかった男の人の姿が見えるようになった。
彼は、黒く長い髪を一本の三つ編みにしていて、前髪は斜め右下がりに真っ直ぐ切られていた。
明るい緑の瞳は熟れた果実のような瑞々しく透き通っていて、僕の想像していた風貌と全く食い違っている。
町にいるいじめっ子のジョンみたいに、見た感じからして悪そうな顔をしていると思ってたけど、実際の彼の容姿はかなり整っていた。
「エリー、団長が呼んでる」
「あ?なんで??」
「たぶん、お客に用事」
「あー、なる〜」
三つ編みの彼はエリーって名前なんだね。
そして、灯りを持ってやってきたのは、招待状を持って来たミロさんだ。
エリーさんの後ろから、ミロさんがひょっこり顔を出して僕を見ている。
「お客人、団長に会いに行こう」
「さっさと行った方がいいぜ。団長を待たせると怖えー奴がいるからさ」
エリーさんは僕に背を向けると、先に部屋を出てしまった。
後から来たミロさんは、僕が来るのを待ってくれている。
んー他に選択肢はないし、ひとまずは招待状の団長さまに会いに行こうかな。
「さっきぶりですね」
「うん、よく来た」
来たと言うより、来させられたんだけどね。
自分が今どこにいるのか、どうして強制テレボートで呼び出されたのか、全く分からない状態だ。
急にいなくなっちゃったし、サンディウスや屋敷の人たちが心配してるかもしれない。
僕がこの場所にいるってことは、皆んなは知らないはずだからね。
もし危ないところだったらどうしよう……。
お父様やお姉様、騎士団のみんなは助けに来てくれるかな。
「はぁ……」
「疲れたか?もう少しだから、頑張れ」
出てしまった溜め息が大きかったのか、気がついたミロさんが振り返って声をかけてくれた。
「……うん」
溜め息の理由は違うけど、励ましてくれるミロさんの優しさに少し安心する。
ミロさんはいい人そうだし、エリーさんも悪い人ってわけじゃなさそうなんだよねー。
きっと、団長さまも悪人ではないはず!
前向きな気持ちで歩いていれば、薄暗い通りを抜けて階段を上がり切った先で、ようやく明るい場所に出て来れた。
周りを見渡すと、貴族の屋敷のような豪華な造りをしているのがわかる。
さっきまでいたところは、お屋敷の地下牢だったのかもしれない。
だとすると、ここは騎士団を保有するほどの武力がある騎士の屋敷ということになるけど……。
まさか、団長ってかなり偉い人なんじゃないのかな?
有力貴族のご子息?
それとも武功を立てた騎士爵?
何であれ、権力争いに巻き込まれるのだけは避けなくちゃいけない。
お父様には敵が多いとよく聞くし、二人のお兄様が優秀すぎて周りから妬まれているらしい。
もしかしたら僕は人質として捕まったのかもしれない。
よし。団長さまに会ったら始めにちゃんと言おう。
僕は何の発言権もないしがない三男ですって。
僕は目の前に見えてきた大きな扉を見ながら、小さな拳をグッと握りしめた。
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