王宮からの招待状(3)
ミロが帰って一人になった僕は、早速もらった手紙を開けることにした。
椅子に掛けてから封を開けると、中には綺麗な模様の描かれた紙が一枚入っている。
二つ折りにされている紙を開くと、中には短い文が見やすい大きさの字で書かれていた。
『拝啓、ラルト・ヴァントラーク様。貴方を王宮へご招待いたします。』
「何これ?お兄様からじゃないよね?」
手紙を届けてくれたミロが「団長から」っていうから、てっきり今家にいない一番上のお兄様からかと思ったけど、どうやら違ったみたいだ。
お兄様がこんな丁寧な言葉を使うはずないないもんね。
ということは、この手紙はどこの団長さんからなんだろう。
僕はまだ剣士にもなれてないから、騎士の知り合いなんてお父様の騎士団ぐらいだ。
騎士団長の知り合いもお兄様だけだし……。
今まで会ったことのある騎士を思い浮かべながら、うんうんと僕が唸っていると、突然手に持っていた手紙が光を放ち始めた。
「ま、眩しい!」
光は目を開けているのが困難なほどに強くて、眩しさに耐えかねた僕はギュッと目を瞑った。
それから、そう時間も経たないうちに眩しさから解放された僕はゆっくりと目を開ける。
先ほどの明るさから一転。
今度は薄暗くて、周りがよく見えない。
「ここ、どこなんだろう?」
光のせいで目が慣れてないのかと思いきや、よく見ると僕の部屋と全く違うみたいだ。
その証拠に、壁に一つだけある松明がメラメラと燃えている。
あんなものが部屋にあったら、部屋が燃えちゃうからね。
松明の周辺は明るく、壁が石でできていることが分かった。
それと、ところどころがひび割れていて、お世辞にも綺麗とは言えないところのようだ。
差出人不明の手紙と、いきなりの転移。
そして、知らない場所。
推測するにこれは——。
「大ピンチなんじゃないかな!?」
「ああ。大ピンチだな」
僕は反射的に、声のした方を見た。
そこは松明とは真逆の位置で、よく見なければそこに誰かがいるなんて絶対に分りっこないぐらい、ほとんど人の姿は見えない。
声色からして、たぶん男の人だと思う。
「だ、誰ですか?」
僕は恐る恐る聞いてみる。
「だーれだ?」
「……」
「……おい!こういう時は、とりあえず適当な名前出してみろよ!」
本当に思い当たりがなくて黙っていたら、相手の人、勝手に怒り出しちゃったよ。
無視されたと思ったのかな?
「すいません。こんなことする人が誰も思い当たらなくて……」
「あー、もういいや。マジで返されるとテンション下がるわ」
とりあえず誤ってみたけど、さらに相手の機嫌を損ねちゃったみたいだね。
初めて会うタイプの人だから、どう接していいか分かんないや。
影の方でブツブツ何かを呟いている相手を眺めながら、僕は重たい息を吐いた。
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