街でお買い物って、何買うの?(2)


 「本当に失礼しました!!」


 ブライダル専門店から出た僕たちは、街の中央にある広場のベンチに腰を掛けている。

 店を出る前は真っ赤だったサンディウスの顔も、だいぶ赤みが引いてきたところだ。


 「仕方ないよ。勘違いしてただけなんだから。サンディウスはこの街に初めて来たんだし、どんなお店があるかなんて知らないのは当然だよ」


 「だからと言って、先ほどのことは酷い勘違いでした。今思えば、確かに伴侶同士でお揃いの物を身につける習慣があることは、私も知っていることでしたのに」


 サンディウスは、肩を落とし俯きながら覇気のない声で答える。


 分かりやすく落ち込んでいるよ……。

 ごめん、サンディウス。

 僕がちゃんと、あのお店がブライダル店だと伝えていれば、サンディウスがこんなに落ち込むことなかったのに。


 でも、僕もこの街は随分と久しぶりで、すぐに何のお店か分からなかったので、そこは許して欲しいところだ。

 中に入ってから何となく状況が掴めてきた時はもう、サンディウスが店員さんに注文してたんだよね。

 サンディウスの決断力に、僕は完敗だったよ。


 それで、一つ気になるところがあるんだけど、物知りなサンディウスは、なんで、ペアリングのことを知らなかったんだろう。

 もしかして、お国による文化の違いとかかな?


 「婚姻の証って、婚約指輪や結婚指輪が一般的だよね。サンディウスの国では違ったりするの?」


 「私の記憶ですと、身につける物であれば特に何でもありでしたね。ネックレスにピアス、ブレスレッドや髪留めなど、色々です」


 俯いていたサンディウスが少し顔を上げた。

 視線はどこか遠くを見つめていて、遠い故郷を思い出している様に見える。


 「そっか〜。じゃあ、ペアリングが夫婦や恋人の誓いっていう感覚はないんだね」


 「……いえ。以前はそうでしたが、最近はペアリングが一般化しつつあると、分かっていたはずだったのですが……。失念していました」


 サンディウスはこちらに顔を向け、少し恥ずかしそうに笑った。

 もう、落ち込んではいないみたいだ。


 「友人同士でもお揃いの物を身につけたりするから、間違ってるってわけじゃないんだけどね。あえて指輪を選ぶ人は少ないかな」


 「では、友人同士ではどういったものが好ましいのでしょうか?」


 「服とか靴とかかな?鞄をお揃いにする人もいたかも。アクセサリー系だとブレスレットが手軽だと思うよ」


 「わかりました。ならば、ブレスレットをお揃いで身につけませんか?」


 「もちろん!でも、その前にご飯にしない?」


 さっきほどから気になっていた、食べ物のいい匂い。

 お腹が空くのも仕方ないんじゃないかな。


 「ふふ。そうしましょうか」


 美味しそうな匂いに誘われて、僕らはまた賑やかな商店街へと向かっていく。

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