王宮からの使い
訓練場で倒れてから2週間。
ようやくお姉様からお許しがでて、僕は訓練場の端っこで一人稽古の真っ最中だ。
久しぶりに体を動かしたのに、何だか前より動きが良くなってる気がする。
適度な休息も必要だったってことなのかな?
今までの努力が無駄だとは思わないけど、今度からは少しくらい休む日を作った方がいいのかもしれないね。
振る剣の速度や正確性が実感できる程に上がっているのを嬉しく思いながら、僕は木人形相手に剣を打ち込む。
「見事な剣捌きですね」
後ろから声をかけられ振り返ると、背の高い見知った顔の騎士が立っていた。
ここに来てから何度か会ってるに、名前を知らなくてごめんなさい!
分からないものは仕方がないので、とりあえず役職名で呼んでみよう。
「ありがとうございます、騎士団長さん」
「『騎士団長さん』なんて仰らずに、ステラトスとお呼びください」
ステラトスか〜。
やっと騎士団長さんの名前を聞けたよ。
今度からはちゃんと、名前で呼ばせていただきます。
僕が分かったと頷くと、ステラトスは嬉しそうに笑った。
そして僕の前に膝を着くと、僕の両手を包み込むように両手で握り、目を輝かせながら話し出す。
「先日の主人様との手合わせ。感動いたしました」
先日のとは、お父様との稽古のことなか?
騎士団長のステラトスが感動するほどのモノじゃなかったと思うけど……。
「僕は最後に気絶しちゃって、みっともなかったでしょ?」
自分の至らなさが、みんなに知られた事件だったと僕は記憶してるんだけどなー。
「そんな!主人様にルールを破らせるなんて、前代未聞のことですよ!誇りに思うべきです」
なんと、どうやらステラトスにとっては違うらしい。
「確かに、お父様と手合わせしたことだけでも名誉なことだよね」
「はい。主人様と剣を交える栄誉を頂けることこそ、素晴らしいことなのです」
ステラトスはお父様を凄く尊敬しているようだ。
騎士団の中でお父様に一番近い存在なのに、それでもお父様に対して仲間意識よりも敬意の方が大きいんだね。
このやり取りだけでも、お父様の騎士団長での立ち位置が伺える。
騎士団の騎士たちはお父様を神様みたいに思っているんだ。
そんな神様と手合わせできることは、本当に凄いことだと伝えたいんだろうなぁ。
そこで気になるのが、ステラトスとお父様の関係だ。
ステラトスはお父様に一番近い存在だけど、相手は神様だからね。
どれくらい経験値を伸ばせるか。
「因みに、騎士団長さんは何回手合わせを?」
「月に一度ほど」
「結構されてますね」
意外と多い。
もっと、半年に一度とか、一年に一度とか。
そんな感じの珍しさだと思ったのに、月一は多いよ。
「回数なんて関係ありません。一回一回が特別で、記念日なんです」
「記念日……?」
「毎月の月末は、主人様が私の全てを受け止めてくだる記念日です」
記念日多くない?
それに、お父様への気持ちが重すぎる気がする……。
「へ、へー。そうなんだー」
ステラトスって、お父様の熱狂な信者だったんだ。
忠誠心って言葉じゃ足りないくらいの熱を感じるよ……。
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