突然の呼び出し(4)

 王国騎士が帰ってからじきに、サンディウスも起きてきたので、今は三人で朝食を食べている。

 今日のメインは、ふわふわ白パンと朝どれ卵の半熟目玉焼きトーストだ。


 売れ切り必至の白パンは、中々手に入らない上にお値段も少し高めのリッチ食材。

 今日みたいな普段日には食べられないはずなんだけど、さっき来た王国騎士が手土産で持ってきてくれたらしい。

 じいちゃんは凄い形相で追い返してたけど、貰うものはもらったんだね……。


 卵は家の庭で採れるから毎日新鮮なものが食べられる。

 多く採れた分は、じいちゃんが町に売りにいったりもして、収入源にもなってるんだよね。


 僕は目玉焼きの乗ったパンを両手で掴み、大きな口でかぶりつく。

 甘い白パンと濃厚な卵が、噛むごとに口の中でとろけていく。


 うぅ……、なんでもない日にこんな美味しいものが食べられるなんて!

 「幸せ……」

 

 僕が朝食の美味しさに感動している側で、じいちゃんとサンディウスは、何やら不穏な気配を漂わせていた。


 「散々騒ぎ立てていった時は、後で仕返しにでも行こうかと思っておったが。手土産のセンスはまあまあ良かったようじゃから、多めに見てやるとするかの」

 「そうですね。ラルト様が満足なさっているのでしたら、あの者の処遇は少し検討して差し上げましょう」


 二人とも、あの人のこと相当嫌だったんだね。

 確かに朝から煩くするのはよくないけど、なんか事情がありそうでもあったし、あんまり責めるのは可哀想だと思うなぁ。

 とは言っても、僕は何の話をしていたのかも変わらないから、庇ってはあげられない。

 サンディウスも怒ってるってことは、部屋まで声が聞こえたのかな?

 僕は居間に近づくまで気が付かなかったけど、サンディウスは相当耳がいいみたい。

 もしかして、僕のイビキとか寝言が聞こえたりしてないよね?

 隣の部屋だったから心配だよ〜。


 「ラルト様、そろそろ森へ行くお時間ですね」

 「もうそんな時間!?」

 「王国騎士(バカ)のせいで時間を無駄にしてしまったからの」

 「ラルト様の貴重なお時間を奪うとは……。やはり今から追いかけて打首に」


 冗談なのか本気なのか分からない笑顔で物騒なことを言ながら、サンディウスが外へ出ようとドアへ手を伸ばした。


 「いや!そんなことしなくていいから!!」


 僕が後ろからしがみつくと、サンディウスの動きはすぐに止まった。

 が、触れていないはずのドアが、一人でに開いていく。

 その様子をぼんやりと眺めていると、感電に開かれたドアの向こうに、僕のよく知る人物が立っていた。


 「ご無沙汰しております、ラルト様」

 「……」


 驚きすぎて何も言えなくなっている僕に、彼は淡々と挨拶をする。

 

 「お迎えにあがりました」


 綺麗な礼をとる彼が背に羽織る赤から、僕はしばらく目が離せなかった。

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