突然の呼び出し
サンディウスに会ってから一週間。
「ていっ!やっ!とうっ!
僕はいつも通り森で剣の鍛錬をしている。
「……ふぅ」
丸太への打ち込みが終わって適当なところに腰を下ろすと、そこにはサンディウスもいて。
「ラルト様お疲れ様です」
タオルを差し出してくれる。
僕が「ありがとう」とお礼を言ってタオルを受け取ると、サンディウスはニッコリ微笑んで、次は冷たい水を渡してくれた。
こんな感じで一週間、サンディウスはずっと僕の訓練に付き添っているけど、退屈じゃないか心配だ。
初日はサンディウスも一緒に訓練をしたんだけど、僕とサンディウスの力の差は歴然だった。
村一番の剣士より断然サンディウスの方が強そうだ。
もしかしたら王国騎士にも引けを取らないかも知れない。
だから、まだ剣士にもなれない僕の訓練に無理に付き合わせるのが申し訳なくて、一緒に訓練するのをお断りした。
じいちゃんとも仲良くなったみたいだったし、家で過ごしたり、村に行く方が楽しいかなって思ってね。
でも、サンディウスは僕といたいからって一緒に森へ来てくれる。
申し訳ないと思う反面、嬉しくて断れなかったんだよな……。
「そろそろお昼の時間ですね。星の庭へと移動しましょうか」
「うん。そうだね」
サンディウスが手際よく辺りの荷物をまとめて立ち上がった。
僕も何かしようと辺りを見渡したけど、手にできたのは自分の剣だけ。
このまま友達を荷物持ちにするわけにはいかない。
僕も手伝うよと目で訴えてみるけど、サンディウスに爽やかな笑顔で拒否された。
今日もダメだったか。
一週間ずっとこの調子で、僕がサンディウスに勝てる日は来るのかな……。
七色の花が咲き乱れる庭園の真ん中で、サンディウスが持って来たバケットを開き、中にあったサンドイッチを一つ取り出し僕に渡した。
僕はそれを受け取り、お礼を言ってから口に入れる。
今日の具材はマッシュポテトとベーコンだね。
冷めてもいい感じに食感が残っているマッシュポテトは胡椒がきいてスパイシー。
そこに薄切りのベーコンの塩気と油が染み込んで、ガッツリしたパンチのあるサンドイッチだ。
この景色でこのサンドイッチは何だかミスマッチな気がする。
風に舞う花びらを目で追いながら、僕は口の中と目の前の景色のアンバランスをしみじみ感じていた。
星の庭には毎日来ているけど、いつ見てもやっぱり綺麗なところだなぁ。
前にサンディウスに聞いた、夜になって花が光っているところを見てみたいけど、じいちゃんから許しをもらえず、まだお預けのままだ。
理由は、夜は魔物の動きが活発で、昼よりも手強くなるから。
森にそんなに強い魔物はいないけど、まだ剣士になれてない僕には危険な相手に違いない。
剣士試験に受かったら記念に行って来なって言ってくれたし、次こそ絶対合格しないとだね!
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