穏やかな日常

 星の森を出ていつもの訓練場に帰ってくると、空は薄ら赤く染まり始めていた。

 「もう日が暮れるから、家に帰らないと」

 空のカゴと愛用の剣を持って、僕はじいちゃんの待つ家に向かった。

 家が見えてくると、そこにはじいちゃんの姿もあった。

 いつもより帰りが遅いから、心配させちゃったみたい。

 手を振ると、じいちゃんも振返してくれる。

 僕は早くじいちゃんを安心させてあげようと、家まで後少しの距離を猛ダッシュし、勢いのまま飛びついた。


 「ただいま、じいちゃん」

 「おかえり、ラルト。今日は遅かったじゃないか」

 「心配かけてゴメンなさい……。新しい友達と出会って、色々とあったんだよ」


 僕はじいちゃんから少し離れ、振り返って後ろにいるサンディウスに視線を向ける。

 じいちゃんも、僕の視線を追ってサンディウスを見た。


 「彼は“サンディウス”。森の中で出会ったんだ」


 笑顔で友達を紹介する僕に対して、じいちゃんは険しい顔をしていた。

 あれ?何で、じいちゃん怒ってるんだろう。

 じいちゃんは基本的に、悪人以外は誰でも歓迎するタイプの人だ。

 つい一週間前に、森で行き倒れてた旅人を連れてきた時だって、一晩泊めてあげたのに。

 もしかして、サンディウスを悪人だと思ってるとか?


 「サンディウスとは出会ったばかりだけど、悪い人じゃないと思うんだ」

 「……そうじゃの。悪人には見えん。じゃが、ラルト。アレをどこで拾ってきた」


 アレって……。幾らじいちゃんでも、友達をアレ呼ばわりするのは許せない。


 「アレじゃなくて、サンディウスだよ!」


 僕がぷぅっと怒って顔を背けると、じいちゃんが「すまない」と小声で謝ってきたので、仕方ないから許してあげた。


 「サンディウスとは森で出会ったんだ。森から出られなくなってたところを、僕が助けたんだよ」

 「森っていうのは、いつもの訓練場か?」

 「ううん。その奥の“星の庭”っていう不思議なところ。綺麗なお花がいっぱい咲いてて、すごく綺麗なんだよ」

 「やはり、そうか……」


 んー、じいちゃんあんまり驚いてないよね。

 星の庭のこと知ってたのかな。

 サンディウスは、じいちゃんも入れないところって言ってたけど、聞いたことはあったのかも知れない。


 うんうん、と考え込んでいるじいちゃんはひとまず置いといて、サンディウスにもじいちゃんを紹介しないと。


 「サンディウス、僕のじいちゃんだよ」

 「アルト様のお祖父様はいろいろと物知りだと伺っていましたが、なるほど。これは想定以上でした」


 じいちゃんが星の庭を知ってたことに、びっくりしたのかな?

 二人して目を合わせながら考え込んじゃったよ。

 なんか、僕だけ何にも考えてないみたいで、恥ずかしくなってきたよ。

 そうだ、これからどうやって二人に仲良くなってもらうか考えよーと。

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