星の庭(3)

 僕が不思議そうに見つめると、サンディウスが困ったような顔で笑った。


 「そうですね。今は色々と制約があり、自由に歩きまわることができなくなってしまいました。ですが……」


 話の途中でサンディウスが僕に手を差し出してきた。

 僕はその手をじっと見つめる。

 シミもシワもない綺麗な白い手だなと思って見ていたら、何となく名前を呼ばれたような気がしてきて顔を上げたら、サンディウスと目が合った。


 「あなたが私を連れ出してくれれば、ここから出ることができます」

 「連れ出すって、どうやって?」


 話を聞くからに、サンディウスは僕より凄い力を持っているはず。

 そんなサンディウスが出られなくて困っているのに、僕がどうやって連れ出すっていうのか。

 僕は、たぶん力に慣れないであろう申し訳なさを抱えながら、返事を待った。


 「私に触れながら私が必要だと願ってくだされば、私はここから出られるはずです」


 ただ僕が手を繋ぐだけって。

 そんな簡単なことでいいの?

 もしかして、ここを出る条件は「一人では出られないけど誰かと一緒なら出られます」みたいな感じなのかな。

 それなら僕でも力になれそうだよ。

 

 「分かった。やってみる」


 僕は差し出された手を握り、心の中で願った。


 サンディウスとここから一緒に出て、色々なところに行けるようになったら嬉しいです。

 まだ知り合ったばかりだけど、サンディウスは僕の友達なんです。

 僕は友達の力になりたい。

 お願いです。サンディウスをここから出してください。


 丁寧にお願いをしていたら、いつの間にか握る力が強くなっていたみたいだ。

 サンディウスの手の感触をハッキリと感じ、僕は少し手の力を緩めた。

 ついでにサンディウスの様子を伺うと、ニッコリと頬笑み返された。

 これは痛かったのか、大丈夫だったのか、どちらか分からないな……。


 僕は誤魔化すようにそろりと手を引っ込めて、どうなったのか聞いてみる。


 「お願いしたけど、どうかな?」


 サンディウスは少し残念そうに手を見ている。

 

 もしかして、失敗?

 お願いが足りなかったのかな。

 それとも、やっぱり僕じゃダメだったとか?

 すごく期待してたのにダメだったなんて。

 勝手にできると思われたただけなのに、なんか申し訳なくなってくるよ……。


 「ダメだったのかな?」


 重い空気に耐えられず、とりあえず話かける。

 僕の声で我に返ったのか、サンディウスはバッと顔を上げた。

 その顔は満面の笑みを浮かべ、先ほどの重い空気はどこへやら。

 誰がどう見ても成功したと分かる喜びようだ。


「そんなはずありません!今すぐにでも外へ行けます!!」


 だろうね。表情でわかったよ。

 サンディウスって、表情豊かだよね。


 でも、さっきの重い空気は何だったんだろう。

 外に出るのは成功したから……あ、もしかして、手を強く握られたことに対する怒りだったり?

 表情だけではまだまだ、サンディウスを理解できない僕であった。

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