星の庭(2)

 サンディウスが何者なのか。

 色々あるけど、一番はやっぱり——。


 「イケメンのお兄さん」

 「……違います」

 「高貴な家柄の人」

 「違います」

 「えーと、体が引き締まってるから、武術の達人!それか、遠いところから話しかけてきたから、すっごい魔法使いとか……」

 「全部違います」


 それっぽいと思うのを片っ端から挙げたのに全部違うなんて、正解なんてわかんないよ。

 ん〜、これ以上は何も思いつかないや。

 ここは降参して本人に聞いてみるのが一番だね。

 

 「ごめん。サンディウスが何者なのか教えてくれる?」

 「私は……、放浪者です」

 「放浪者?」

 「少し前に家を出まして、それから行く当てもなく彷徨っていました。旅とも言えない日々だったので、旅人というのも違う気がします。ですから、放浪者と名乗るのがピッタリでしょう」


 それってつまり、家出中ってことだよね。

 意外だな。サンディウスって、しっかりしてそうに見えるから、たとえ家族と喧嘩になっても家出するようなイメージなんてないよ。

 それに、旅とも言えない日々って、結構大変だったのかな。

 お金も持たず、身一つで家出しちゃったとか?

 サンディウスは意外とおっちょこちょいな人なのかもしれない。


 「サンディウスは色々なところに行ってたんだね」

 「そうですね。初めに辿り着いたのは、この国の南にある海岸でした。しばらく海を眺めていましたが、時間ごとに色や波の動きが変わって、面白かったですよ」

 「いいなー。僕は海をみたことないんだ。じいちゃんの話を聞いて、いつか行ってみたいって思ってるけどね」


 海はこの国の最南端にあって、中央区に位置する村からは、かなり離れている。

 それに、舗装された街道ではなくて、魔物が出るかもしれない平原を通らないといけないから、誰でも気軽に行けるような場所じゃない。

 距離も遠くて危険な場所に、ただ見たいかというだけで行くのは、お金持ちの貴族ぐらいだ。

 あと、腕の立つ剣士。

 僕は凄腕の剣士になって、いつか、じいちゃんの見た色々な景色を見に行きたいんだ。


 「では、一緒に観に行きませんか」

 「それは無理だよ。ここからだと遠いからさ」

 「心配無用です。距離は確かにありますが、途中途中に町や村がありますから、休みながら向かっていけば、そう無理なこともないかと」

 「でも、魔物も出て危険だよ」

 「魔物討伐は私の得意分野です。私は海からここまできたんですよ?その間に魔物にも何度か遭遇しましたが、こうして無事でいられていますし」


 確かに、海からここまできたんだったら、ここから海に行くこともできるってことだろうけど……。


 「サンディウスは、ここから出られないんじゃなかったっけ?」


 だとしたら、一緒に海に行くなんて無理だよね?

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