星の庭

 サンディウスと出会ったこの場所は、星の庭と言うらしい。

 夜になると花たちが光り輝いて、星空のように見えるんだとか。

 改めて見ると、花の形が星になっているのが分かった。


「ここに僕が来られたのは、サンディウスに招待されたからってことなのかな?」


 初めにサンディウスが「ここに来れるのは、私が招待した者だけです」って言ってたよね。


 「いいえ、ラルト様であれば私の招待などなくても、ご自身で探し当てられたはずです」


 どういうこと?

 熟練の武人でも、魔塔の主でも、来れないところなんじゃないの?


 「ずっとお待ちしていたのですが、なかなか来てくださらないかったので、私が案内することにしのです」

 「それは、お待たせしました?」

 「はい。お待ちしておりました、ラルト様」


 悲しそうな顔をしてるところ申し訳ないけど、僕が自力で辿り着くのは絶対に無理だからね。

 何でそう思っちゃったんだろう。

 それに、ずっと待ってたって言ってたね。

 今日が初めましてじゃなかったのかな?

 

 「僕たちどこかで会ったことあったっけ?」

 「いいえ。会うのは今日が初めてです」


 やっぱり初めて会ったんだ。

 じゃあ、どうして僕が星の庭に来るのを待ってたんだろう。

 サンディウスは僕のことをどうやって知ったのかな。


 「どうして僕を待ってたの?」

 「ラスト様がこの森にいらした時に、私は一目惚れしてしまったのです。それからずっと、いつかこの星の庭に来てくれるだろうと待ち焦がれていました」


 一目惚れって、一目見て恋に落ちるっていう?

 いやいや!

 まるで物語の王子様みたいなサンディウスが、どっからどう見ても平凡な僕に恋するなんてありえないよ。

 きっと、恋とは違う別の何かだよね。

 恋に落ちたみたいに、凄く心惹かれるとかかな?

 でも僕のどこに惹かれたのか、さっぱり分からないよ。

 よし。この件は一旦保留だ!


 「あはは。全然気が付かなくてごめんね。サンディウスから会いにきてくれれば良かったのに」

 「私もそうしたかったのですが、ここから出られなくなりまして。声をかけることすらできなかったのですが、今日ようやくそれができるようになったのです。私から会いに行くとなれば、あと何年かかったことか」


 サンディウスは色々大変みたいだね。

 話すのにも、どこかへ行くのにも、自由じゃないみたい。

 もし僕にできることがあれば、力になってあげたいな。

 だって僕らは友達だからね。


 「サンディウス。困り事なら僕に教えて。僕にできることは少ないけど、困っている友達を放っては置けないよ」

 「ありがとうございます。でも答える前に、ラルト様にお聞きしたいことがあります」


 突然、サンディウスが真剣な眼差しで僕を見つめた。

 途端にサッと場に静けさが広がり、だんだんと緊張感が高まっていく。


 いったい何を聞かれるんだろう。

 もし答えを間違えたらどうかなちゃいそうな雰囲気だよ。

 

 しばらく溜めてから、サンディウスが再び口を開いた。


 「私が何者かわかりますか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る