村外れの森(2)

 森には毎日のように来てるけど、あまり奥まで行ったことはなかった。


 「このまま進んでも大丈夫かな?森から出られなくなっちゃうかも」

 「大丈夫ですよ。帰りも私が案内しますから。そのまま真っ直ぐ進んでいただいて、大きな蔦の葉が見えたら、分かれ道を左です」

 「あそこを左だね」


 初めて聞こえた声の言う通りに森を進んでいるんだけど、なかなか姿が見えないのはなんでだろう。

 結構歩いてるけど、聞こえてくる声の大きさは大きくも小さくもならなくて、ちゃんと近づけてるのか全然わからないよ。

 実は側にいるのかなって思ったりもしたけど、周りを見ても誰もいないんだよね。

 もしかして、付いて行っちゃダメだったのかな。

 そういえば、魔物の中には人の言葉を真似して騙すのもいるって、じいちゃんから聞いたかも。


 「木々の向こうが明るくなっているのが見えますか?」

 「うん、見えるよ」

 「そこに私はいますので、もう少しで会えますよ」

 「やっとだね!」

 「やっと、ですね」


 そろそろ声の主と会えるみたいだね。

 せっかくここまで来たんだし、もし相手が魔物だとしても、会わなきゃそんだよ。

 逃げるのは姿を遅くない……はず。


 生い茂る木々の間を抜けて、ようやく目的の場所にたどり着いた。


 「わ〜、すごい綺麗!」


 森の中の木漏れ日が暗く感じるくらい、日の光で明るく照らされている景色は、今まで見たどの場所よりも輝いて見える。

 場所一面に色とりどりの花が咲き乱れ、お伽話の楽園に来たよなワクワク感が胸を叩いた。


 「森にこんな場所があったなんて、知らなかったよ」

 「素敵な場所でしょう?私もここが気に入っているんです」

 「うん。すごく綺麗なところだね」


 じいちゃんからは、こんな綺麗な場所があるなんて聞いたことなかった。

 知ってたら絶対教えてくれたはずだよ。

 じいちゃんも知らない秘境なのかな。


 「じいちゃんにも教えてあげなくちゃ」

 「ふふ。あなたが望むのならば、特別に招待しましょうか」

 「招待?」


 ここは勝手に来れない場所なのかな?

 確かに、森に長いこと住んでるじいちゃんは、森のことで知らないことは無いって言ってた。

 僕も、住んでる動物や生えてる植物のこと、たくさん教えてもらったもんね。

 そんなじいちゃんが知らないってことは、この場所は誰でも見つけられるってわけじゃ無いのかも。


 「ここに来れるのは、私が招待した者だけです。熟練の武人であろうと、魔塔の主であろうと、私の許可なしには見ることもできないでしょう」


 綺麗なだけじゃなくて、すごい特別な場所みたい。

 なんか緊張してきたよ……。

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