村外れの森

 村の外れにある森は、僕のいつもの訓練場。

 手作りの木人形や木に吊るした丸太をを使って、毎日剣の訓練をしてるんだ。


 「今日も素振りから」


 ここに来たら、まずは素振りから始める。

 素振りが100回終わったら、次は体術の訓練。

 その後は、木人形に打ち込みをしたり、丸太を使った回避と反撃の訓練をする。


 「はぁ、はぁ。午前の訓練は終わり!」


 集中してると、時間ってあっという間に過ぎちゃうよね。

 毎日が早くて、次の試験まで時間がいくらあっても足りないよ。


 「早くお昼を食べて、午後の訓練も頑張らないと」


 大きな切り株に座って、じいちゃんが持たせてくれたカゴを開ける。

 中には厚くてふわふわしたパンに、それぞれ違う具が挟んであるサンドウィッチが三個入っていた。

 どれも美味しそうだけど、一番のお気に入りは野菜とハムが挟んであるのかな。

 でも、厚焼き卵のも好き。

 もう一つのは……。


 「なんだろう?」


 初めて見る具だ。

 じいちゃんは、いつもお昼ご飯にサンドウィッチを持たせてくれる。

 だから食べたことあるのがほとんどなんだけど、時々新作があって、それが入ってるとワクワクするんだよね。

 どのサンドウィッチも美味しいから、今回のも美味しいはず!

 どんな味か楽しみだなー。


 「鶏肉が入ってるのはわかるけど、一緒に挟んであるのは野菜かな?んー、なんかスーと爽やかな匂いがするけど、なんの野菜かな」


 「それはハーブですね」

 「ハーブ?」

 「はい。この森に自生する種類のようです。ハーブは主に香り漬けに使われることが多く、料理のアクセントになります。野菜のように主にそれを食べることはあまりありませんが、料理食材としては一般的なものですよ」

 「へー、そうなんだ。じゃあ、僕が普段食べてるご飯にも入ってたりするのかな」

 「その可能性は大いにありますね。ちなみに、あなたが今手にしている料理は、王国の騎士団に古くから伝わるもので、遠征時によく食べられていましたよ。もっとも、パンは日持ちするように作られた硬いもので、肉もその日獲れた適当なものでしたが、ハーブの種類と味付けは同じですから間違いありません」

 「騎士団の伝統料理!」


 じいちゃんも騎士だった時、これを食べていたのかな。

 僕はまだ剣士の修行中だけど、騎士団の味を一足先に体験だ。

 いざ、実食!


 「ん〜、美味しい!ピリ辛なお肉と爽やかなハーブが合うね!目が覚めるような感じで、お腹いっぱいなのに眠くならないや。どんどんやる気が漲ってくるよ」


 それと、僕も騎士団の一員になったみたいで嬉しい。


 「午後の訓練も頑張ってくださいね」

 「うん!ありがとう」 


 よーし!

 今日はいつもより頑張れそうだ。

 応援してくれる人もいるし、カッコ悪いことろは見せられないぞー。


 僕は中身の無くなったカゴを置いて、代わりに木刀を握る。

 それとなく辺りを見渡して、一つ気がついたことがあった。


 「君はだれなの?」


 僕と話している人の姿が見えないけど、一体誰なんだろう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る