いつもの朝(2)
「ラルト、朝食できてるぞ。冷める前に食べなさい」
「はーい」
キッチンにはパンの焼けたいい匂いが充満している。
さっきはまだ準備中だったみたいだけど、着替えてる間に完成したのかな。
テーブルに並んだパンとスープから出来立ての暖かい香りがした。
「今日は人参とジャガイモのスープだね」
「昨日、ヤオのところでおまけしてもらったから、たっぷりあってな。ちぃとばかし入れすぎたか?」
お皿の中には汁よりも具の方が多くて、とっても食べ応えがありそう。
今日も朝から訓練だから、たくさん食べて栄養をつけないと。
「ううん。僕は、人参もジャガイモの好きだから嬉しいよ」
「お前は好き嫌いがないから作るのに苦労せんわ」
「好き嫌いがある子は立派な剣士になれないって、お母様が言ってたからね」
お母様は騎士であるお父様のことが大好きで、毎日のようにお父様の武勇伝を聞かせてくれた。
その中でお母様が一番楽しそうに話してくれたのが、お父様はなんでも食べるっていう話だった。
お父様は好き嫌いがなくて、出されたものは何でも食べてくれるらしい。
僕も、お父様が食べ物を残すところは見たことがないから、たぶん本当のことだと思う。
昔、料理が苦手だったお母様が、失敗したケーキをお父様にあげた時に、お父様が美味しいと言って食べてくれたのがとっても嬉しかったって、お母様が幸せそうに話していたことを今でも覚えてる。
その時のことがきっかけで、お母様は料理に目覚め立って言ってたっけ。
お母様の作ってくれたクッキー、美味しかったなぁ。
「そうじゃな。剣士になれば過酷な場面にも遭遇する。遠征にいけば、食材の選り好みなんてしてられんよ。わしは木の根を食ったこともあったな」
じいちゃんは、お父様より何でも食べれそうだね……。
木の根っこか。
今度挑戦してみようかな。
「じいちゃんは、やっぱり凄いや。僕も立派な剣士になれるように頑張らないと」
僕の剣士の道はまだ始まっていない。
きっと、まだまだ
「お前の努力は必ず報われる。いつか、王国一の剣士になる日が待ち遠しいわ」
「ふふ。じいちゃんの期待に応えられるように、もっともっと頑張らないとだね」
「今でも十分だがな。無理だけはするんじゃないぞ。剣士は引き際も見分けられてこそ一人前じゃ」
「うん!じゃあ、行ってくるねー」
「ラルト!昼飯を忘れとるぞ」
「あ、本当だ。ありがとう、じいちゃん。行ってきます!」
「日暮までには帰ってこいよー」
僕はお昼ご飯が入ったカゴを片手に、いつもの森へ向かった。
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