第20話 賭けの行方
無事に巨大ワニのモンスターを倒したリオン。
リゼットの足を挟んでいる木を軽く持ち上げると、湖に向けて投げ捨てた。
リゼットはリオンを見つめると、恥ずかしそうに目をそらした。
「あ、ありがとう……リオン」
「お、初めてちゃんと名前を呼んだんじゃないか?」
「うっさい……」
いつもの生意気な態度はドコへ行ったのか。
リゼットはしおらしくなっていた。
足を見ると腫れている。下手すると折れているかもしれない。
回復魔法なら治るだろう。
リオンがそう思ってノアを見た。
彼女なら回復もできるはずだが、なにやらリオンのことを警戒するように睨んでいた。
まるで野生の猫みたいだ。
(まぁ、成績の良くない俺がワニをぶっ倒したからな。俺が実力を隠して学園に潜り込んでたみたいに見える。国から護衛の任務を受けてるノアからすると、警戒対象なんだろう)
ノアは立場的にリオンを警戒しなくてはならない。
だが、とりあえずリゼットを治してあげて欲しい。
「あー、ノア? リゼットを治してあげて欲しいんだが……」
「……了解です」
ノアはリオンを警戒しながらもリゼットに近づく。患部を見ると、軽く足を支えた。
リゼットの頭上に浮かんだドローンから光の粒子が落ちる。光を浴びると、足の腫れが徐々に収まっていった。
「お兄ちゃん!」
「おっと」
リゼットを見守っていると、ノエルがリオンに抱きついてきた。
ぐりぐりと頭を胸に押し付けて来る。
撫でて欲しい時の仕草だ。
リオンは要望に応えて、軽くノエルを撫でる。
「ノエルに怪我は無いな?」
「うん。お兄ちゃんが来てくれたから大丈夫だよ」
「それは良かった……シェリルや王子も無事だな?」
ぽかんとしていたジーク王子に声をかけると、意識が戻ったらしい。
焦ったようにリオンへと詰め寄って来た。
「い、今のはどういうことだ!? お兄ちゃんは、お世辞にも魔法の成績が良くなかったはずだが⁉」
「だから、お兄ちゃんって呼ぶな……俺は魔法は苦手だけど、魔道具作るのは得意なんだよ」
「な⁉ そうか、その籠手が魔道具なのか……あの速さであれほどの威力の魔法を放てるとは……もしも、あのような魔道具が量産できるようになれば貴族の優位性は著しく落ちる……」
ぶつぶつと一人の世界に入ってしまったジーク王子。
ふらふらとリオンから離れていってしまう。
一方、シェリルはリオンに呆れたような目を向けていた。
「相変わらず、めちゃくちゃな威力してるわね」
「まぁ、これぐらいしか取り柄が無いからな」
「……学校には隠してたのよね? バレたらあなたも零組入りじゃないの?」
「お兄ちゃんが零組に来るなら大歓迎だよ!!」
「さぁな、もうクラスは決まってるんだし、たぶん大丈夫だろ」
実際のところは学校側がどのような反応をするのか、リオンにも分からない。
ノアを通じて報告はされるだろうが、今からリオンのクラスが変わるかは微妙な所である。
「じゃあ、私はあなたが零組に入れられる方に賭けるわ」
「それなら俺は、願望も込めて現状維持で」
リオンとしては、ストーリーを維持するためにも別のクラスで大人しくしていたい。
「私が勝ったらデート一回よ。今から王都のスイーツ店を調べておくわ」
「あ、じゃあ私もお兄ちゃんが零組に来る方に賭けるから!」
「はいはい」
その後、リオン達は街に戻りモンスターの討伐を報告。
巨大ワニこと『キャノンダイル』を倒したことを報告すると、教師陣たちに事情聴取されることとなった。
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