第18話 討伐?
リオンと別れた後、ノエルたちとリゼットたちは街道前の門で集合。
どちらのチームが先にモンスターを倒すかの競争が始まった。
「ま、売られた喧嘩に負けるのも嫌だし、さっさとモンスターを討伐したいところね」
「そのためには、モンスターを見つけないといけませんね」
「討伐対象は、亀のようなモンスターだったか?」
「そうですね。このモンスターです」
ノエルは教師から配られていた依頼書を取り出した。
そこには討伐対象となるモンスターの情報と共にイラストが描かれている。
ジーク王子は依頼書をまじまじと見つめる。
「ジャイアント・ロックタートルか、鈍重そうだが硬そうだな」
「ロックタートルは水辺に生息している可能性が高いです。まずはその近辺を捜索することを推奨します」
「そうね。とりあえずノアの提案に従いましょうか」
作戦会議の結果、四人は近くにある湖に向かうことにした。
ちなみに街道には魔物除けの魔道具が設置されているため比較的安全に移動できる。
もっとも別にモンスターを完全に排除できるわけでもない。
個体差があるのか、モンスターによっては効き目が薄い。
今回の討伐対象も効果が薄く、なんどか街道沿いに出現して馬車が襲われているらしい。
「……だけど、どうして私たちがモンスター退治なんてするのかしらね。こういうのって、本来は冒険者とか衛兵の仕事でしょう?」
「さぁな……もしかすると、俺たち零組を鍛えるために混ぜているのかもしれん」
「本当に、零組って何のために作られたんでしょうね?」
ノエルたちは歩みを進める。
途中、なんどかモンスターと遭遇したが難なく倒すことができた。
どうやらパーティーのバランスが良いらしい。
ノエルは普段よりも戦いやすい気がした。
そうして街道沿いの湖に到着。
周囲に怪しい影が無いか見回していると。
『グオォォォォォ!!』
大木が軋むような雄たけびが聞こえた。
「もしかして、ジャイアント・ロックタートルですかね?」
「マズいな。リゼットたちに先を越されたかもしれん」
「ヤバいじゃない! 急ぐわよ!」
走り出すシェリル。
それを追いかけてノエルたちも走り出した。
街道から離れた湖の岸辺。森に遮られて見えづらい場所に岩石のように巨大な亀が居た。岩のようにゴツゴツとした巨大な甲羅を背負っている。
その前にはリゼットたち。戦況は芳しくないらしい。リゼットの額には冷や汗が流れていた。
「こいつ……固すぎなんだけど!!」
「リゼット様、もっと強力な魔法を使うしかありません。私が気を引いている隙に――きゃあ!?」
「ちょっと大丈夫!? くっ、こっち向きなさいバカ亀!!」
リゼットの取り巻きが亀の首振りによって吹き飛ばされた。
亀の気を引こうとリゼットが杖を構える。杖先から炎の塊が飛んだ。
それは亀の甲羅に当たると大きな爆発を引き起こした。
しかし、攻撃を食らった亀は涼しい顔。その甲羅は煤で汚れた程度だ。
「残念だけど、交代する時間みたいね」
「うげ!? 零組……」
「危ない所を助けてやるんだから、もうちょっと喜びなさいよ……」
「分かった……あとは頼んだ……」
ノエルたちはリゼットたちの前に飛び出した。
このままリゼットたちが戦っていても勝ち目は薄い。
選手交代である。
リゼットは倒れた取り巻きに肩を貸して撤収。
安全な場所からノエルたちを眺める。
シェリルはライフルのような銃を構える。
その銃から丸い円の光が飛び出した。
その円には模様が描かれていき、徐々に魔法陣のように変化している。
しかし、完成にはしばらくの時間がかかることが予想できた。
「それじゃあ、前衛二人。頼んだわよ!」
「任せておけ!」
「分かりました」
シェリルの掛け声に、ノエルとジーク王子が走り出した。
ノエルはショートソードの二刀流。ジーク王子は一本のロングソードを構えた。
二人の攻撃が亀の顔を切りつける。
しかし固い。甲羅でなくてもロックタートルの硬さは侮れない。
岩のような皮膚に遮られて、二人の攻撃は浅く皮膚を切り裂いただけだ。
「思う用に攻撃が通らんな……」
「支援します。受け取ってください」
一度ロックタートルから距離を取った二人。
その頭上に猫のような顔が書かれたドローンが飛んでいた。
そこからキラキラと光の粒子が降り注ぐ。
光を浴びた二人は、グッと力が増したように感じた。
「ありがとう。ノアさん!」
「今度はもう少し深く切り込めそうだ!」
再びロックタートルに攻撃を仕掛けた二人。
先ほどよりも鋭い斬撃がロックタートルを襲う。
ズバン!!
二人の攻撃が左右からヒット。ロックタートルの顔から赤い血が噴き出した。
『グオォォォ!?』
ロックタートルが苦しむように叫びをあげた。
ドシン!!
苛立たし気に地面を踏み鳴らすと、ノエルとジーク王子の足元がボコりと盛り上がった。
「二人とも、避けなさい!」
シェリルの叫びに反応して、二人は飛び退く。
二人の居た足元から、槍のように鋭い岩石が飛び出した。
「残念だけどロックタートル。あなたはこれで終わりよ!」
シェリルが構えていた銃。そこから飛び出していた光の魔法陣が完成していた。
シェリルがカチリと引き金を引く。
ズバン!!
一筋の光線が銃口から放たれる。それは真っすぐにロックタートルの額へと突き刺さった。
『グオォォォォォ……』
力なく横たわるロックタートル。
これで決着。無事にノエルたちはロックタートルを討伐した。
――と思った時だった。
バッシャーン!!
巨大な水しぶきを上げて、湖から巨大な影が飛び出した。
それは大きな口を開くと、ジャイアント・ロックタートルに噛みついた。
バキ。バキバキバキ!!
そいつは甲羅ごとロックタートルを噛み砕き、ごくりと飲み込んだ。
「なによ。あのデカいワニ!?」
ノエルたちの前に現れたのは、巨大なワニのようなモンスターだった。
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