第17話 勝負!

 ノアを仲間に加えた後、リオン達は王子とシェリルを誘いに向かった。

 二人はモンスター退治の依頼に同行することを承諾。

 五人は街道に出るために街を歩いていた。


「え、リオンは一緒に行かないの?」

「当たり前だろ、これは零組への課題なんだから。俺は街でお留守番だ」


 リオンが答えると、シェリルは目を逸らす。小さなため息が聞こえた。


「なんだ……そもそも零組ってなんなのかしらね。平民も貴族も同じクラスに入れるんだもの。王子様は何か知らないの?」

「さぁな、俺も知らされていない。だが俺としては、なかなか楽しいクラスに入れてくれて感謝している。俺に頭を下げるばかりの貴族たちに囲まれては、こんな学園生活は送れなかっただろう」


 ジーク王子は『フハハハハ!!』と笑っていた。

 いきなり笑いだすので、近くを歩いていた通行人からギョッとした顔を向けられていた。

 一番面白いのはお前である。


「あっそ、殴られて喜ぶ変態王子に聞いたのが無駄だったわね」

「フッ、俺を変態呼ばわりか……これだから零組は面白い」

「あぁ、はいはい」


 雑にあしらわれた王子。

 それを無視して、シェリルはリオンを見た。


「どうして、ノエルは零組なのにリオンは違うのかしら?」

「シェリルさんにしては良いことを言いましたね。お兄ちゃんが同じクラスなら、きっと楽しい学園生活が送れます!」

「俺もお兄ちゃんなら大歓迎だ。なんなら教員に掛け合ってやろうか?」

「妹はともかく、王子はお兄ちゃんって呼ぶな。いや、そもそも弾かれてるんだから俺じゃ零組には入れないんだろ」


 そもそも、零組に入ればメインキャラとして色々な事件に関わることになる。

 リオンは面倒事は嫌なのでモブキャラで良い。

 悪役として死ぬことなく、普通に生き残るのがベストなのだ。


「あれれ、零組――と落ちこぼれじゃん?」


 そんな風に話しながら、街道を目指していたリオン達。

 ばったりと出会ったのは、私服姿のリゼットだった。

 周りには女子生徒もいる。取り巻きを連れて街で遊んでいたらしい。


「は? 今、お兄ちゃんのことを落ちこぼれって――」

「ああ、ノエルはこっちで大人しくしててな」

「わ、お兄ちゃん……ちょっと強引だよ……」


 キラリと光る刃を懐から取り出したノエル。

 そのままでは殺傷事件に発展しそうだったので、リオンはノエルを引き止めた。

 しかし、うっかり抱き寄せるような形になってしまった。

 それを見たシェリルが目を吊り上げた。


「ちょっとリオン、どうして妹とイチャイチャしだすのよ⁉」

「こっちは良いから。話を進めてくれ⁉」


 わちゃわちゃと混乱する状況を収めたのは、ジーク王子だった。


「それで、リゼット嬢は我々に何か用事があるのか?」


 落ち着いた様子で問いかけるジーク王子。

 普段のバカみたいな言動を見ていると忘れるが、彼は王子である。

 一瞬で場を制していた。


「いえ、ただジーク王子や零組の方々がいらっしゃったので……少し気になっただけです」


 リゼットは普段のメスガキムーブを抑えて、うやうやしくジーク王子に応対した。

 これがジーク王子にするべき態度なのだろう。


「我々は零組へ来た依頼を解決するために、街道へ向かっている途中だ」

「街道へ? どうしてですか?」

「ただのモンスター退治だ。リゼット嬢が気にするほどのことじゃない」

「……そうですか」


 リゼットはジーク王子の言葉に納得。

 道を譲る――かと思いきや、おもむろに手袋を外した。

 その手袋をノエルに向かって投げる。


「勝手なお願いと存じますが、私たちと勝負してください」

「……どういうつもりだ?」


 これはレーツェル王国での勝負を挑む合図。

 リゼットはノエルたちに、勝負を挑んだのだ。

 ちょっとメスガキムーブを抑えるかと思いきや、当然のように爆弾を投げ込んできた。


「私は前々から零組が気に入らないのです。だって、零組はこの国の要人たちのご子息、ご息女が集まっているクラス。今後は特別なカリキュラムが予定されていると聞きます……それはまるで、私たちがないがしろにされているようではありませんか?」


 もっともな話ではある。

 リゼットだってこの国の一翼を担う四大貴族の息女。

 しかし、要人の子供たちが集められた零組には入れられていない。

 それは四大貴族を軽んじているようにも見えるだろう。


「私たちが先にモンスターを討伐したら……私たちを零組に入れるよう掛け合ってくださりませんか?」


 なんとも無礼な言動である。

 仮にも自国の王子様を利用しようと言うのだ。

 しかし、残念ながらウチの王子様は頭がぶっ壊れてしまっているのだ。


「フハハハハ!! なるほど面白い。どちらが先にモンスターを討伐するか競うのだな? その勝負、受けてやろう!」

「ちょっとポンコツ王子!? なにを勝手に決めてるのよ⁉」

「まぁ、別に良いんじゃないですか? 私たちに損はないですし……」

「よし、それじゃあ決まり!! 私たちも武器を準備してくるから、街道に出る門で集合!!」


 そう言って、リゼットは取り巻きを連れて走って行った。

 

 ゲームでの流れとは少し違うが、リゼットと零組が勝負する展開は一緒だ。

 なんとか、ゲームと同じようにストーリーが進んでいる。


「じゃあ、俺はやることあるから先に帰るから」

「え、お兄ちゃん帰っちゃうの?」

「だって、俺が一緒に居ても仕方ないだろ?」

「そうだけど……」


 後はゲームと同じように、無事に進むだろう。

 リオンは一足先に帰ることにした。

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