第16話 パーティー編成
新入生たちが学校生活に慣れたころ、リオンはノエルに連れられて街を歩いていた。
休日のお出かけだが、デートではない。
二人とも学校の制服を着ている。課外活動の真っ最中だ。
「よし、これでこの依頼は完了だね」
ノエルが所属する零組には、住民や生徒たちから集めた依頼が渡される。
依頼と言っても、ほとんどは雑用やモンスター退治。
いわゆるサブクエストだ。
ちなみに、他の零組のメンバーは一緒に行動していない。
依頼の解決を主導するのはノエルの役目になっているからだ。
ノエルは零組のクラス長に任命――というより押し付けられてしまったらしい。
ノエルはリオンが絡むと押しが強いが、普段は少し気の弱い優しい女の子。
ゲームと同じように、クラスメイト達に押し切られたらしい。
いちおうクラス長として、零組のメンバーに手伝わせることもできる。
しかし、まだ仲が良くないためか、現在はリオンを連れて依頼をこなしていた。
「次は……街道沿いに出没した強いモンスターの討伐だって」
こうして届けられるクエストの全てが、サブクエストではない。
中にはストーリーを進めるにあたって、必須のクエストも交じっている。
ノエルが言った、モンスターの討伐は必須クエストの一つだったはずだ。
「あ、これに関してはお兄ちゃんに手伝って貰うのはダメみたい……クラスメイトと協力して討伐するように書いてある」
「担任の先生から、チームワークの悪さを指摘されてたんだっけ? その訓練も兼ねてるんだろうな」
「うぅ……まだクラスの子とあんまり喋れてないんだよね……」
「いやいや、シェリルとか王子様とか、あの辺を誘っとけば良いだろ?」
「……あの二人は別の意味で嫌だなぁ」
そうは言っても、贅沢は言っていられない。
リオン達は、二人を探すために学校に向かった。
休日のこの時間なら、二人ともクラブ活動の最中だ。
(ただ、パーティーのバランスを考えるともう一人欲しいな。ノエルと王子は前衛。シェリルは後衛だが攻撃寄り。回復や支援が得意な奴を誘っておきたいところだ)
などと考えていると、ちょうど良いのを発見した。
日当たりの良いベンチに銀髪の少女が居た。
ぼんやりとドコか遠くを見つめている。目を開けて眠っているのかと思うほど微動だにしない。
「あの子も零組だろう? せっかくだから、誘っとこう」
「あぁ、『ノア』ちゃんはどうだろう……いつも眠そうにしてるし、断られるかも……」
「まぁまぁ、聞くだけタダだろう?」
彼女の名は『ノア・クロスベル』。
リオン達と同学年だが、他の生徒と比べて明らかに小柄なので年齢詐称の噂が流れている少女だ。
リオン達が近付くと、ノアはぼんやりと見上げてきた。
感情の読めない瞳をしているが、ノアなら依頼に付いて行くだろうと確信していた。
「ノアちゃん、今から依頼のモンスター退治に行くんだけど一緒に来てくれないかな?」
「……分かりました。同行しましょう」
「え、一緒に来てくれるの?」
「はい……なにか驚くことがありますか?」
「う、ううん。一緒に来てくれるなら心強いよ」
ノアはあっさりとモンスター退治への同行を決めた。
それもそのはず、それが彼女の仕事だから。
実は噂の通りにノアは年齢を偽っている。
その年齢はリオン達よりも二歳年下の十三歳。
どうして学校に通っているかと言えば、零組を護衛するためだ。
彼女はレーツェル王国の秘密騎士団――現代風に言えば公安のような秘密裏に治安維持をする組織に属している騎士である。
要人の子供たちが多く所属している零組に入って、生徒たちを守るのがノアに与えられた任務だ。
当然ながら、モンスター退治なんて荒事をするのであれば、付いて行かない理由もない。
(ノアは回復やバフも得意な支援系のキャラ……バランス良いパーティーで行けば、序盤のクエストは楽勝だろうな)
そうして新しい同行者を加えて、リオン達は王子とシェリルを探しに向かった。
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