第10話 疑念(後編)

「こっちこっち」


 誘われるまま、ルグドーとホシはルーペに付き従う。辿り着いたのは廃墟となっているビルだった。それを見上げながら、ホシがリボルバーの薬室を確認する。


「敵の数は……」

「一人しかいないから平気。ターゲットだけね。じゃ、あたしはここでルー君と待ってるからいててて!」

「お前も来い。ルグドーもな」


 ホシはルグドーに抱き着こうとしたルーペを、無理やり引っ張っていく。

 ルーペに対する当たりが強いホシに違和感を覚えながらも、ルグドーはビルの中へと入った。


「もうあたしの仕事は終わりで良くない? ルー君だってあたしとお話してた方がいいと――あ、この女といっしょがいいのね、マジかー」


 両手を頭の後ろに回しながら、気楽に歩くルーペ。

 対して、ホシは慎重に進んでいる。

 最上階にある鍵の掛かった部屋をホシは蹴破った。


「な――き、貴様!? ぐ……!」

「何者だ?」


 刀の刃先を鼻先に突きつけられて、スナイパーは両手を挙げる。

 この状況から逆転は不可能だろう。相手もそれはわかっているようだ。


「誰だ? なぜ私を狙う」

「は、はっ! 誰が……」

「へぇー、ふーん、そうなんだ」


 訳知り顔でルーペが呟く。にやにや笑っていた。


「ほうほう、なるほどなるほど。まぁちょっとは納得できるかな」

「な、なんだ……?」

「話せ」

「ご要望にお応えして。この男は、コロッセオで賭けをしていた金持ちに雇われたらしいわ。二年前に」

「二年前だと? ……続けろ」

「話としては単純ね。雇い主が賭けた相手を優勝させるように、この男は動きましたと」

「今のチャンピオンを勝たせるためにか? しかし――」

「ご明察。今のチャンピオンが優勝しちゃったのはイレギュラー。本来は準優勝の選手が不戦勝で勝つはずだったんだから。つまりこの男は失敗しちゃったわけ。で、あんたのせいでうまくいかなかったって恨んでる。まぁ一言で言うなら逆恨みってこと」

「そうか」


 ホシが男を睨む。男の顔が憎々しげに歪んだ。


「そうだ、貴様のせいだよ! 貴様のガードが堅かったせいで、なかなか弱みを握れなかった! 脅して負かそうとしていたのに! しかも、余計な邪魔のせいで誘拐にも失敗して――がッ!」


 男が床に殴り倒される。ルグドーは寒気を感じた。


「どういうことだ……?」


 ホシの声音は背筋が凍るほど冷たかった。ふとルーペを見ると、身体を震わせている。心を読める彼女がダイレクトに影響を受けているのだ。


「お前が、攫ったのか?」

「い、いや俺は――ひっ!」


 ホシの刀が男の首横の床に刺さる。そのまま横に薙げば首を刎ねられる状態だ。


「どこだ?」

「え? は?」

「ツキはどこだ」


 いつでも殺せる。ホシの本気の殺意を見た。

 ホシの境遇を考えれば、それも当然かもしれない。大切な妹を誘拐した犯人を憎むのは当たり前だ。

 それでもルグドーは嫌な予感がした。

 このままホシが彼を殺してしまったら。

 元の彼女に戻れなくなるような予感が。


「く、くそが、今頃野垂れ死んでるさ!」


 死を避けられないと悟ったのか、男が火に油を注ぐ。

 せめて最後に罵倒してやろうという魂胆だろう。


「最期の時まで姉の名前を呼びながら、苦しんで死んだだろうよ!!」

「そうか」


 ホシが刀を持つ手に、力を入れて。


「ホシさん! だ、ダメです!」


 ルグドーがその背中に抱き着く。一か八かの賭けだったが、ホシの力が緩んだ。


「……そうだな。まだ話は終わっていない」


 声音がいつもの調子に戻った。


「それに、そいつは大したことしていないわ」


 冷や汗を拭うルーペ。息を整えて、説明を始める。


「誘拐しようと妹さんを呼び出したのはそいつみたいね。でも、邪魔が入ったみたい。これは……男? 別の人間に攫われたようね」

「何者だ」

「へっ。だ、誰が言うか――」

「そいつも正体は知らないわ」

「そうか」


 ホシが気落ちする。あと一歩で真相に届きそうだったのに。


「けど、行き先は心当たりがある。機甲獣の巣窟と呼ばれる場所」

「禁域樹海か」


 その名を聞いて、男が諦観したように首の力を抜いた。



 ※※※




 四方で輝く光源によって夜でも明るい街中を、ホマレ・ノマドリファインが飛行していく。黒の外套がはためき、同じ色の装甲がちらちらと露出していた。


「ウィリアムさんの予想通りでしたね」


 後部座席からルグドーが話しかけてくる。ホシは操縦に集中しながらも、言うべき言葉を諳んじた。


「ありがとう、ルグドー」

「いえ、ボクは何も……」

「君のおかげだ。何もかも。私は……うまくやり過ぎたのかもな。もし、姿を隠さず、最初からこの身を晒しておけば、あの男には辿り着けていたはずだ。いや、もしそうだとしても、全てを聞き出す前に……」

「そんなことないですよ、ホシさんは。ボクなんていなくても、うまくやれていたはずです」


 果たしてそうだろうか、とペダルを踏みながら考える。

 ホシは話を聞き出した後、男を放流した。一介の殺し屋など、何の脅威でもない。

 例え本当に誘拐していたとしても、殺すほどの相手ではなかったはずだ。

 なのに、殺意を抑えきれなかった。自らの不甲斐なさに嫌気が差す。


「君の成果だ。ルーペの件も踏まえても、な」

「そんなことないですって。……ところで、どうするんですか?」

「樹海に行く前に、まずは過去の因縁を清算する」


 ホマレ・ノマドリファインが着地したのは、メトロポリスでも富裕層が多く住むエリアだ。

 目の前には豪邸がある。警備用のEGがこちらに気付いた。


『ここは私有地です。立ち止まらずに――うわッ!』


 ホマレ・ノマドリファインがガードの首を刀で刎ね飛ばす。


「織姫……使い勝手は変わっていないようだ」


 ホシは感慨深く呟いた。やはり刀はいい。

 塀を飛び越え邸宅の敷地内へと侵入したホマレ・ノマドリファインは、駆けつけた警備用EGに囲まれた。デフォルトのガードカスタムだ。警棒とスタンピストルを装備している機体が四機。


『警告するッ! これ以上の犯罪行為は――ぐッ!?』


 刀がデフォルトガードの頭部を貫く。スタンピストルを撃つデフォルトは、ホマレ・ノマドリファインの回避先が邸宅の前だったことで躊躇した。その隙にピストルを構える両手を切断する。

 最後の一機が警棒で殴りかかって来たが、容易くその腕を刎ねた。


『く、くそ……増援――いや、軍に連絡を! うわあああ!』


 両足を斬ってダウンさせる。その合間に一機逃げ出したが、追撃はしない。

 事前にダウンロードしていた見取り図と、センサーに映る屋内の熱源とを比較して標的がいる地点を予測。

 該当する部屋へホマレ・ノマドリファインの右腕を伸ばした。

 壁を壊した先で、豪華な服装の中年男が茫然としている。

 右手で掴むとじたばたと暴れ始めた。


「な、なんだお前は――ふざけるな! 私を誰だと――」

「確かに私は、お前のことをよく知らない」


 ホシはハッチを開き、素顔を晒す。


「だがお前は、私のことをよく知っているだろう?」

「な、ホシ・アマノガワ!? いや、私は――」

「お前の悪事は承知している。相応しい場所へ連れて行こう」


 ハッチを閉じ、中年男を手で掴んだままホマレ・ノマドリファインが飛行する。

 今度は中流階級が多いエリアへと移動。壁端にぽつんと存在している寂れたバーの前で止まった。

 何事かと店員が出てくる。ホシは店員の前で男を手放した。

 ぎゃ、という悲鳴。店員にスピーカーで話しかける。


「チャンピオンへのお詫びだ。渡してくれ」

「ホシさん、パトロールです」


 サブモニターを確認する。センサーには三機のEGが表示されている。


「ディフェンダーですね」

「市街地警備用だな。行こう」


 ホマレ・ノマドがビル間を縫って移動する。傍受した敵の通信が聞こえてきた。


『通報によれば、全身を黒の外套に包んだ機体だ。正体は不明だが、刀を所持している。違法装備の可能性は低い。楽勝だな』

『楽観は危険かと思いますが』

『オリバー。相変わらず真面目な奴だな。パトロールなど適当にやればいいんだ』

「油断してますね……」


 能天気な会話を聞いたルグドーが呆れる。


「セカンドアース軍は、他のアース軍に比べてもやる気がないんだ」

「そりゃ、脱走したくもなりますね」


 彼はアメリカ地方の輸送拠点で出会った元軍人たちのことを思い出しているのだろう。


「不正と腐敗も山ほどある」


 というホシの説明を補完するかのように、


『金持ちだといいが。貧乏人だと金で解決できなくて困るな』


 隊長らしき人物の不正行為と思しきセリフが流れてくる。


「さて、どうやってやり過ごすか」

「戦わないんですか?」


 ホシはサブモニターで地形情報を確認する。


「対処はできるが、本意ではない。警備体制に穴を開けてしまうし、街の治安悪化にも繋がる恐れがある」


 犯罪者に返り討ちにされるパトロールを見て民衆はどう思うかは、想像に難くない。


「治安悪化……パトロールが弱いって思われちゃうから?」

「そんなところだ。以前私がいた時よりも治安が悪化している。下手なことをしない方がいいだろう」

「誉れがないんですね」

「そうだ」


 方策は定まった。

 ホマレ・ノマドリファインはあえて、ゆったりとした速度で低空飛行を続けた。

 程なくしてパトロールに発見される。


『標的を捕捉。警告、開始します――あっ、逃げました!』

『くそ、追いかけろ!』


 黒白のディフェンダーパトロール仕様に追尾されながら、建物の間を飛んでいく。 

 センサーで通行EGや車、人々に配慮しながら入り組んだ道路を左に曲がり、今度は右の道路へと入る。そうやってパトロールを引きはがし、十字路の右へ進んだ。同時にメインスラスターを停止し、ステルス状態となる。

 間髪入れずに左腕を反対側通路へ向け、アンカーを射出。命中したビルへ機体を移動させ、静かな歩行でビルの陰へと隠れた。


『熱源反応消失、スラスターを切ったようです』


 十字路にディフェンダーが三機やってきている。ホシがスラスターを停止させた位置で周辺確認を行っていた。


『徒歩で逃げてるのか? バカなことを。この先だな。行くぞ』

『いえ、妙ですね……』


 オリバーと呼ばれていたパトロールは優秀なようだ。

 ホシは動じることなくじっと様子を窺う。


『警備EG四機を瞬時に戦闘不能にするような奴です。そんな単純な逃げ方をしますかね? 何か、スラスターを使わずとも高速移動できるような手段を持っているのでは』

「まずいんじゃ……」

「大丈夫だ、ルグドー」


 彼は確かに有能だ。しかし、


『そんなわけないだろ。行くぞ。せっかくのポイント、みすみす逃してたまるか』

『ですが』

『決めるのは俺だ。黙って従え』


 無能な上司がその能力を台無しにする。

 ディフェンダーパトロールが二機、先行していく。残った一機が名残惜しそうに反対側の道路を見つめていたが、諦めて追従していった。


「ご愁傷様だな」

「こうなること、わかってたんですか?」

「腐敗しているからな。能力の優劣よりも、不正の有無で地位が決まる。ゆえに、組織としての質は非常に悪いんだ。こちらとしては好都合だが」


 しかしこの練度ではいずれ……。

 ホシは危惧を振り払い、今やるべきことに集中する。


「しばらくすればEGが通過するだろう。その中に混ざり、熱源センサーを攪乱する」



 ※※※



「と、いうわけで……」

「なるほどねぇ」


 酒場では赤髪の騎士風の女性が、テーブルを挟んで中年の男を眺めている。

 店員による説明を聞いて男はとても苛立っていたが、女性の方はどこか楽しげだった。

 何かいいことがあったような。


「わ、私は何も知らずに誘拐された被害者だ。屋敷に返してくれ」

「でも私へのお土産、らしいけど?」


 つまみのスナックを食べながら、女は訊ねる。


「言いがかりだ」

「ちょっと調べたんだけどさ。あんた、賭けてたんだってね。二年前、私が決勝で戦った相手に」


 男の顔が青ざめる。


「だ、だから何だと言うんだ。賭けは合法だろう。みんなやってる」

「ここのマスターもね。私が勝ったおかげで大儲けさ。でもねえ」


 女は愛用の長剣をテーブルの上に置く。布を取り出し、手入れを始めた。


「どうしても邪推したくなっちゃうんだよな。あんたが何か手を回して、本来決勝に出る奴を出れないようにしたんじゃないかって。あんたは金持ちだから、そういうこと、簡単にできるだろうし」

「想像で物を語るのはやめてくれ」


 刃を布で磨く女性。


「確かにそうだ。でもな、届けた相手が私の想像通りだったら、意味もなくこんなことはしないと思うんだよ。なにせ、私が知る限りもっとも強く、賢く、正しい人間だし」

「ただの腰抜け野郎だろう」


 布を動かす手が止まる。


「なぁ、私の想像した相手がホシ・アマノガワだって言ったっけ?」

「い、いや……なんとなくそう思っただけだ」


 女はため息を吐いた。


「こんな七面倒臭い、腹の探り合いは結構。あんたが何をしたのかはわかってる。私はあんたを疑ってない。叩きのめすつもりなんだ」


 男が目に見えて動揺する。


「ま、待て、どういうことだ」

「あんたが一番それをよくわかってるんじゃないのか?」

「私は何もしていない! 本当だ!」

「確かにその反応を見るに、できなかったんだろうなと思うわな」

「なら――」

「でもやろうとしただろカスが」


 女が男の胸倉を掴んで引き寄せた。


「ぜ、全部あいつが悪いんだ! そうだろう!?」

「あ、何? 私が棚ぼた優勝って呼ばれてること? やっぱりいい気はしないよねえ。なんかめちゃくちゃ弱い感じはするし。なぜだか、優勝したのもまぐれだなんだっていちゃもんつけてくるやつだっているしねえ。でも、その原因はさ、間違いなく――てめえだろうが」

「に、逃げたのが悪いんじゃないのか!?」

「その原因を作ったのがてめえだって話だろ? 私の知るホシ・アマノガワは理由もなく勝負から逃げない。大方、妹でも誘拐しようとしたんじゃねえか? てめえが雇った殺し屋程度、ホシ相手じゃ話にもなんねえからな。何せ事実上、セカンドアース最強の女だ。逆立ちしたって勝てやしねえ」


 女が手を放すと、男がうまく着席できずに床へ倒れ込んだ。


「こ、こんなことしてタダで済むと思っているのか?」

「メトロポリスの治安がなんで保たれてるか知ってるか?」

「軍、だろう……?」

「私だよ。チャンピオンであるこの私ロゼットが、この都市の治安維持に一役買っている。最初はそんなことないって思ったが、最近よくよく実感するもんでな。軍の代わりに依頼が山ほど舞い込んでくるんだ。ま、ゴミカスばかりの軍じゃしゃーないけど。軍の名を出しても恐れない奴らが、私の名を出すと縮こまるんだと。ただ、やっぱり自意識過剰か? てめえの反応を見ると、そうは思ってない奴も多いみたいだし。どこにコネがあるのか知らないけど、行政府? それとも軍か? 戦うってんなら私は容赦なく叩き潰すぞ?」


 セカンドアース最強の称号を得たロゼットに、武力による脅迫は通用しない。


「金なら払う!」

「出たよ、金持ちの常套手段だ。金さえ払えばなんだって解決できると思ってる。ホント、お花畑だな。でもまぁ、金はあっても困らないし? それもありかもな」

「ほ、本当か……? 今はこれだけだが」


 座り直した男が、クレジットがたっぷり詰まった財布をロゼットに差し出す。

 ロゼットは中身を見てにやりと笑う。悪魔的な笑みだ。

 それを見て、店員が震えあがったが、男は気付いていない。


「クレジットがたっぷりだ。これだけでも結構な額じゃないか? ハハハ」

「は、はは……」

「話は変わるがここは酒場だ。何かしら飲まないと無礼ってことだよな?」

「わ、わかった。ここは私が支払って――」


 ロゼットは店員に空のジョッキを持ってこさせる。そして、クレジットをジョッキの中にぶちまけた。唖然とする男へとジョッキを差し出す。


「お金が大好物なんだろ? 飲めよ」

「え? い、いや……」

「全部飲めや」

 

 ロゼットは剣を男の首筋に突きつける。

 観念した男がえづきながらクレジットを飲み始めた。

 剣を下ろし、頬杖をつく。

 男の飲みっぷりを見守りながら、好敵手へ思いを馳せる。


「これでチャラなんて言わせないぞ、ホシ。早く戻って来い。どっちがセカンドアース最強か、白黒つけようぜ」



 ※※※



「おかえりルー君――むぎゅ」


 ホテルに戻って早々、ルグドーに抱き着こうとしたルーペをホシが制す。


「何すんのよ!」

「近づくんじゃない」

「別にいいでしょ――ん、うーん……?」


 ルーペがまじまじとホシを見つめてくる。彼女は苦手な類だ。


「ははーん? なるほど?」

「その気味の悪い笑みを止めろ」

「意外ですね、ホシさんがそんな反応をするなんて」

「彼女のことはいい。支度をするぞ」


 ルグドーと共に身支度を始める。ホシの荷物のはほとんどがホマレ・ノマドリファインから中なのですぐに終わった。バックパックに荷物を纏めて、端末でルートを確認していると、ルーペが話しかけてくる。


「なんだ?」

「そう邪険にしないでよ。あたしも仲間に入れて欲しいんだけど」

「定員オーバーだ」

「そういう意味じゃないって。……リベレーター」

 

 囁かれる組織の名前。

 最近、同志ではない人物から、その名をよく耳にする。


「私の思考から読み取ったな」


 これだからこの少女は苦手だった。思考が肝であるホシとの相性は最悪だ。


「かなり苦労したけどね。あなたのことははっきりと見通せないけど、悪人じゃないってことはわかる。私は潔癖症じゃないから、人の悪意を全否定なんてするつもりはないけど、それでもどうしたって目につくの。でもさ、あんたみたいな人たちがたくさんいる組織なら、あたしもちゃんと居場所を作れるかなって」

「リヴァイスヒューマンは気苦労も多いからな」

「……そうね。とにかく、こんな美少女がニートなんて人類の損失よ。だから、いいでしょ」

「旧市街にある寂れたレストランに行け。合言葉は――」

「あの日を忘れない。……どういう意味?」

「意味はわからなくていい。私の名前を出せば、問題なく受け入れてくれるだろう」

「そ。ありがと。ところで、あんたたちってさ……」


 ルーペはホシとルグドーを交互に見る。

 楽しそうににんまり笑った後、


「いや、面白いからこのままでいいかな」

「どういう意味だ?」

「終わりましたよ、ホシさん」


 ホシの疑問は、ルグドーの声掛けで解消されなかった。

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