第2話

 俺は気が付くと草原に立っていた。どうやら無事に異世界転移ができたらしい。

 女神シヱテンは俺に世界についてわかるスキルを始め、いろんなスキルをくれたといったがどうやって確認したらいいのかは教えてくれなかった。こういう微妙に不親切なところもテンプレだなと思いつつ、どうせ確認方法もテンプレ通りだろうと思いながら、ステータスオープンといった瞬間に目の前にステータスが出てきた。


 ステータス


 名前:界動 賢司(カイドウ ケンジ)

 年齢:27

 状態:正常

 ステータス:Lv 999

 HP 99999

 MP 9999

 ATK 999

 INT 999

 AGR 999

 DEF 999

 DEX 999


 スキル:異世界理解lv Max

 異世界言語理解lv Max

 無病息災 lv Max

 マジックストレージ lv Max

 レベルブースト lv Max

 自動防御 lv Max

 未来予知 lv 1

 時間停止 lv1

 ???

 ???



 ステータスを見た瞬間に俺は絶句した。スキルもかなりのチートだが、能力値が高すぎる気がする。この世界の平均値を知らないがレベルからみておそらくカンストしているのだろう。


 こいつはとんでもないことになってきたと思いながら、とりあえず自分のスキルを確認していくことにする。


 異世界理解 ― 自身がいる世界について、レベルに応じて様々な情報を得られる(最大レベルの場合は求めるすべてのことがわかる。)

 異世界言語理解 ― レベルに応じて異世界の言葉を理解できる(最大レベルの場合はある程度の精神性(宗教、娯楽を求めるなど)を持つ知性体が扱う意思疎通のため手段すべてに対応できる)

 無病息災 ― レベルに応じて病気や状態異常を防ぐ。(最大レベルの場合いかなる病、毒、呪いなどを無効、疲労、睡眠、食欲なども必須のものではなくなる。しかし寿命は存在する)

 マジックストレージ ― レベルとMPによってストレージの容量が増える(容量はMPのレベル乗であり、単位は1当たり地球での1kgに相当する)

 レベルブースト ― レベルに応じて自身のレベルにブーストがかかる(最大レベルの場合最大レベルまでブースト)

 自動防御 ― レベルに応じてスキル所持者に対する悪意のある直接的行動を防ぐ(最大レベルの場合いかなる悪意のある直接行動をすべて防ぐ)

 未来予知 ― レベルに応じて未来に起こることを知ることができる。(レベル1の場合現在から地球時間で三日後の未来まで観測可能)

 時間停止 ― レベルに応じてスキル所持者と選択された存在の時間を一定時間止める(レベル1の場合地球時間で5分間時間を止めることができる)

 ???  ― 条件が不足しています。条件が満たされた場合表示、発動します。

 ???  ― 条件が不足しています。条件が満たされた場合表示、発動します。



 想像通りどれもこれもチートだらけだった。実際どのようなスキルなのか確認してみることにする。


 取り合えず異世界理解でこの世界について確認してみると、「この世界の名前はファステン。文明レベルは大まかに地球の中世ヨーロッパ程度。世界にはマナと呼ばれる…」と言って非常にややこしい内容を長く説明し始めた。要するに、テンプレ通りの魔法のある異世界で、魔王に責められ世界が滅びそうになっているらしい。この程度で済む内容を1時間近くにわたって説明された。なんでもレベルが高ければいいというものではない。


 異世界言語理解は確認しようがないのでおいておく。周りに誰もいないし。無病息災も同様に確認しようがないので次に行く。


 お次はマジックストレージだ。そこら辺にあった石を拾ってマジックストレージを発動してみると、拾った石が消えて、視界の端に一覧表が現れた。


 花崗岩の石 1


 しっかりと一覧機能があるようで一安心。楽しくなって周辺の石や草を放り込んでいったが、まだ確認していないスキルが残っていることを思い出して再びステータス画面を開いた。


 レベルブーストはまあいいだろう。これでレベルが上がって能力値も上がっているんだろう。


 次の自動防御に関しても一人では確認できないと思ったが、ふと思い立って、さっき拾った石を自分の真上に投げてみた。そしたらぶつかる直前に見えない壁にはじかれた。どうやらこれが自動防御みたいだ。さらにわかるのは、自分の行動であっても自分を傷つけることはできないらしい。まあそんなことはしないが。


 さていよいよお楽しみの未来予知だ。未来予知と時間停止だけはなぜかレベルが1だがそれでも十分にチートじみたスキルだ。とりあえず今できる最大の三日後の自分の様子を確認してみると、どこかの中世風の街で、きれいな女の子と楽しそうに買い物をしていた。三日後にはすでにテンプレイベントをこなしたみたいだ。せっかく異世界に来たんだし、ハーレムを作ってみるか。このチートがあればハーレムの管理もできるだろう。


 最後は時間停止だ。とりあえず周りに誰もいないので自分以外のすべてを時間停止してみた。発動した瞬間視界が暗くなり、息ができなくなった。驚いて動こうとしたが、動くことができない。パニックになったがふと思い立って、周辺環境のすべての時間停止を解除して、生物のみを指定して時間停止してみた。すると視界、呼吸が戻り、体を動かすことができるようになった。空を見上げると遠くに飛んでいる鳥が不自然な姿で固まっている。俺がスキルを解除すると鳥が羽ばたきを再開して飛んで行った。


 やはりすべてを対象に時間を止めたことで、光や空気も時間が止まり、目に光が入らず何も見えず、呼吸をしても自分の息を吐くことも新しい酸素を吸うこともできなかったのだろう。


 これは時間停止をする際には対象をよく選ばなければならないようだ。下手をすれば自分が酸欠で死にかねない。いや無病息災でそれはないか。


 ???のスキル2つは現状何もできないので放置をすることにする。まあそのうち使えるようになるだろう。


 さて、とりあえず一通りスキルの確認はできた。現状の把握ができたからには次は行動だ。


 しかし、この世界で何をするのかとりあえずの目標が欲しい。この世界には魔王もいるし、とりあえず魔王を倒してハーレムを作ることを目標に冒険してみようか。三日以内にはかわいい女の子と仲良くなっているみたいだし、気楽にいこう。異世界理解で最寄りの人が住んでいる場所を確認し、俺は異世界での第一歩を踏み出した。女神さまのいったように多くの人を笑顔にするような冒険をしていこうと思う。




 ~70年後~


 俺がファステンの世界に来て早70年が過ぎ、俺も97歳になった。未来予知で見た限り俺は今日寿命で死ぬらしい。


 俺の人生を振り返ってみると、俺がこの世界での第一歩を踏み出したのち、俺はテンプレ通り魔物に襲われている豪華な馬車を見つけた。その馬車を助けたら、その馬車にはお姫様兼聖女であるダビニャが乗っていて、そのまま一緒に行動することになり、魔王討伐の旅に出ることになった。

 道中様々な敵がいたが、はっきり言って弱すぎて、スキルを使う必要すらなく全部力押しで進んでいき、1年後には魔王を倒した。その過程で多くの美女を助け、俺はしっかりとハーレムを作っていた。その後も、大魔王が攻めてきたり、異なる世界からの軍勢が攻めてきたりといろいろあったが、全部俺が力技で解決をした。もうね、俺の存在がチートだった。それで事件が起きるたびにハーレム要員も増えていって、最終的には100人を超えるハーレムができていた。


 はっきり言って敵と戦うよりハーレムの維持の方が大変だったと思う。未来予知や時間停止なんかは戦闘では一切使わなかったのにハーレムの維持のために毎日使っていたほどだ。おかげでどちらもレベル最大にまで上がり、未来予知は50年後の未来まで見ることができるし、時間停止は1カ月間止めることができる。

 50歳を過ぎるころには攻めてくる敵もいなくなったので、異世界NAISEIテンプレを行い、日本食や地球の電化製品に似た魔道具を開発、農業改革や職人保護、腐った貴族をつぶしたり、奴隷を使っている国が気に食わないので滅ぼしたりしていたら、気が付いたら世界統一をしていた。


 俺が地球にいたときに妄想していた全てを、俺はこの世界で全部できた。女神さまのいう通り、多くの人を笑顔にし、幸福にできたと思う。俺はこの世界を生き切った。もはや未練もなく、もはや寿命を待つばかりだ。ただ気がかりなのは、結局???のスキルは解除されなかったことだ。些細なことだが、女神さまがどんなスキルをくれたのかわからないのは残念だ。


 また妻たちの中には長命種も多くいるため、寿命を延ばそうとしたが状態異常扱いみたいでできなかった。


 ああ、だんだん眠くなってきた。どうやら本当に寿命が来たようだ。俺は満足感とわずかな寂しさを抱え、ゆっくりと目を閉じた。最後の瞬間、頭の中で「条件が解除されました」といった声が聞こえたような気がしたが、その意味を考えることもできず、そのまま俺は意識を失った。





 ????

「さあ!チュートリアルは終わりです!これからが本当の見所ですよ!」

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