あと2人
生物の先生の挨拶が終わったところで2つのグループから物言いが入ったところだった。
津川先生まであと2人ー
「津川の授業っていらないよね」
クラスの雰囲気が変わったのは、リーダー格の女子が放った一言がきっかけだった。
数学の授業が終わり、次の授業までの小休憩時だった。
まだ津川先生は黒板に書いた図式を消している最中で、クラスの大半の生徒も教室内で次の授業の準備をしていた。
同調するものは誰もいなかったが、声を上げてその女子を非難するものもいなかった。
多くの生徒が、深く関わりたくないと横目で女子生徒の様子と津川先生の反応を窺っていた。
津川先生は何事もなかったかのように、黒板を消し続け、消し終わるといつもどおり教材を抱えて教室を後にした。
女子生徒もそれ以降、津川先生に関する話題を出すことはなかった。けれど、クラスには数学の授業のたびに、糸の張ったような緊張感があった。
噂によると、その女子生徒は、津川先生が作った定期テストでの得点が思うほど振るわなかったらしい。事実かどうか分からない噂が一時、クラス内に聞こえていた。
津川先生は教室の雰囲気など意に介さず、それ以降の授業でも、黒板に図式を書いては淡々と解説していた。
次の学期末のテストの作成者は津川先生ではなかった。
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