第20話 5
「……チッ。思いの外、手強かったですね」
人気のない、暗い裏道でルーナムは悪態を吐いた。周囲は夕闇に包まれ、突如何者かが現れても気付かれないだろう。
己を撤退させた
「今回は小手調べだったからまあ良いですが」
「途中で生み出された、あの白い鏡が厄介そうですね」とルーナムは呟く。
あの鏡を生み出したのは、おそらくあのオレンジ色の
なぜなら記録を見た限り、他の
油断をしなければまあ勝てる相手だった。そのはずだった。
「……この私が、撤退、など」
この世界で初めて
悔しいか、と言われると「意外だっただけだ」と返す程度の感情だった。本気さえ出せばまだ勝てる。だから、悔しくはない。
だが、それじゃあつまらないだろう、と思考する。
そして黒い端末を取り出し、ルーナムは連絡を入れる。
「確認は終わった。お前達は今まで同様に『
同じ『
これで、しばらくはあの
「あのマギカ……フロースオレンジが、私の探していた『卵』だ」
と一人呟く。
そしてルーナムは
銀の長髪は肩につく程度の黒髪へ、虚ろな目はそのまま生気がなく暗い黒曜石のような目に。
服装は黒いシャツと黒い上着に黒い細身のパンツスタイルと、季節感を無視した格好へと。
彼は葦月だった。
「絶対に手に入れてみせる。……逃してなるものか、折角の奇跡を」
×
そんなことはつゆ知らず、
「特訓とかどう?」
と、
「だけれど、まずは学業に専念しないと」
もうすぐテストよ、と
「またいつ『
「どうしたの、橙花さん」
「へ、何?」
聞いてなかった、と橙花は気まずさで愛想笑いをする。
「どうしたの」
「なんでもない」
問う桃絵に、首を振った。
「(……どうしよう)」
ルーナムのことが、頭から離れないのだ。
こんな気持ち、人に言えるわけがない。
橙花は苦しくて、泣きそうな気持ちになった。
×
数日過ぎても、異常は治らなかった。
「(どういうこと……?)」
自身の異常に、橙花は混乱している。
気付くと彼のことばかり考えていた。
「……どうかしました?」
様子がおかしいですよ、と
「なんでもない」
と誤魔化すが、あんまり信用してないようだ。間違いなく、怪しまれている。
「(……どうせ、
そう、葦月は表情を変えずに橙花を見下ろした。
実は、橙花が
似た雰囲気やその指に嵌めている『
「(……色からして、恐らく『フロースオレンジ』だろうが)」
だが直接変身している姿を見ていないので予想の中でしかない。初めて出会った日に変身前の姿を見ていたはずだったが、間違いのない確証が欲しかった。
事実かを確認するために行動をしなければならない、と葦月は次の行動を考える。
マギウス×マギカレイド (Magus×Magikaraide) 4^2/月乃宮 夜 @4-2-16
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