第14話 みんなでお出かけ
みんなで話し合い、街で一番大きなショッピングモールに出かけることになった。パレットも一緒である。
「テスト前なのだけれど……」
と、藍華は不安そうだったが
「いいの! 今日はお休みだし」
「次はみんなでお勉強会するのだから、良いでしょう?」
と
きっと、藍華当人も友人達と出かけてみたいという好奇心が僅かにでもあったことも彼女が参加した一因だろう、と
「意外と乗り気ですね!」
と、
×
それから、
大きなショッピングモールには当然、様々な店がありそれぞれが興味を持った場所に入ったり連れ回してもらったりした。
そして夕方。
みんなは充分に楽しみ、良い時間を過ごした。その満足感のまま帰路に就こうとしていたのだが。
「『
とパレットが警戒した様子で周囲を見回した。合わせて橙花達も怪しまれない程度に周囲を警戒する。
だが、周囲は数多の家族連れやさまざまな年齢の集団で溢れかえっていた。丁度、帰宅しようと退場する人や夕食を取ろうと入場する人達が重なる時間帯だったのだ。
「……あっちの方に、強い気配だ!」
そう告げ、パレットの視線の先を橙花達は追う。
そこには
「おや。珍しい」
「え?」
いつも通り、全身を黒い格好で揃えた
驚愕で目を見開く橙花や警戒で険しい表情になる
「こんばんは、橙花さん。……そちらは御友人の方々ですか?」
そう、いつものように落ち着いた声色で彼は挨拶をする。
「何? 橙花ちゃん、知り合いなの?」
困惑する桃絵の声が聞こえた。
「……まさか」
だが、この中で最も混乱しているのは橙花だ。
三ヶ月ほど前から知り合い、お世話になっていたあの人が、と、受けた衝撃が大きかった。
そして、彼の「準備は早いに越したことはありませんので」との言葉がフラッシュバックする。
「そんな、」
顔を青くする橙花と打って変わり、葦月の様子はむしろ白々しいほどに落ち着いて見え、疑いが確信に向かおうとした。
その刹那——葦月の後方で爆発音が響いた。
そして、そのやや遠方に純黒の怪物『
その横には、細身の男ディエースが立っていた。
「今、妙な音が」
聞こえましたね、と呟き葦月が振り返ると、『
周囲は大混乱に陥った。
休日ということもあり、すぐに人でごった返す。橙花は
そして気付くと、葦月を見失ってしまったのだ。
きっと彼は無事に避難しているだろう、と橙花は願う。
橙花達は混乱や避難する周囲に紛れて、人気のない場所へ移動し変身した。
×
「どうやら、これ以上は増えないらしいな」
出揃った5人の魔法少女達をみてディエースは呟く。一安心したらしい。
「せっかくのお休みだったのに、ひどい!」
ソムニウムピーチが訴え、
「こんなに、たくさん人がいるのに不幸をばら撒くなんて最低です!」
トニトルスパインが叫ぶ。
「はっ! 人間の都合なぞ知るか。僕達は僕達の都合で動く」
だが、ディエースは意に介さない。
そして。
『
×
ディエースが拠点に帰れば、そこにはディールクルムとウェスペルが居る。
「作戦は悪くなかった。偶然、
そう、苛立たし気にディエースは言葉を零した。
「もう
面倒そうにウェスペルが呟く。
「次は私の番だ」
とディールクルムは作戦を練り始めた。
×
周囲の修復が終わり、人々の混乱が収まった頃。
「そういえば、さっきのお兄さん誰だったの?」
「へ?」
ふと
「えっと、近くに住む大学生の人だよ。……時々、勉強を教えてもらってるの……」
そう、無難に答えた。不思議と頬が熱くなる。
「あ、わたし探してくる! 多分帰るところだったと思うし、じゃあね!」
居た堪れなくなり、思わずそう叫んでみんなから離れた。
このごった返す人混みの中で見つけられるかは分からなかったが、今日は一緒に帰れるだろうと、そんな気がする。
「あ、いた」
そしてショッピングモールの出入り口のスロープの場所に、
「
と葦月は顔をあげ、橙花を見つめる。
「えへへ。まあね」
「……ところで、きみは何しに行ってたの?」
話を逸らすついでに、橙花は葦月の行動を問う。
「本を買いに。……貴女は?」
「お勉強会開くから、その前準備」
問い返されたので素直に返した。
こんな何気ないやりとりも、なんだか心が安らいだ。
「ああ、もうそんな時期でしたね……ところで、テストの範囲は?」
「あ」
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