第12話 2
とある昼休みに
だが、本日は美術の先生が不在なのもあり、美術室は閉まっており中に入れなかったのだ。
なので今日は図書室に3人と1匹は集まる。場所はなるべく人の迷惑が少なそうな端っこを選んだ。場所を借りるので、ついでにそれぞれが興味を持った本を手に取り持ち寄る。
「珍しい組み合わせね」
と、不意に声をかけられる。見上げると
「あら、それ何かしら……」
橙花達に視線を向けた後、彼女はパレットに注目する。
「見えるの?」
「もしかして、あなた達以外には見えないの?」
目を丸くした橙花達に、茶姫はおっとりと首を傾げた。
橙花がパレットの姿が他の人には見えないらしいことを伝えると
「特別感があって面白いわ」
そう、茶姫はくすくすと楽しそうに微笑む。
「触ってみても、いいかしら?」
首を傾げ、茶姫はパレットに問うた。
「動物とか、あんまり触ったことがなくて。あなた、ふわふわで触り心地が良さそうだから」
「うん! いいよ!」
パレットから許可が下りたので、茶姫はそっとパレットの頭に触れる。おでこの辺りや長い耳の周辺、後頭部などをくりくりと撫でた。
「ふふ、やっぱりふわふわね」
「えへへー」
一通り撫で終えると、茶姫は「撫でさせてくれてありがとう」とパレットにお礼を告げた。
「また撫でても良いかしら?」
「うんっ!」
×
その日の放課後。
「……この場所なら良いだろう」
と、黒い格好の女性、ディールクルムが図書館に現れた。
それなりに人間の気配が多いこの場所なら、短時間で多くの『
「ここは……書庫か」
周囲を見回して呟く。大半がデータ化した世界の『
「読書する人間なら、さぞ深い『
そして『
それからすぐに『
「くく。不幸のばらまき甲斐がある」
そうせせら笑ったその時。
「本は大切にしなきゃいけないんだよ!」
「前より増えてるっ?!」
初めて見た時は橙色の
「まあ良い!」
気を取り直し、「行け! 『
と。その時。
「……何、しているの」
「茶姫ちゃん!?」
思わずソムニウムピーチは声を上げる。
「その声は、桃絵さんね。じゃあそっちは橙花さんと檸檬さん、かしら」
「離れて!」
「危ないよ!」
フロースオレンジとトニトルスパインも、慌てて彼女に呼びかけた。
「いいえ。それよりも私には言いたいことがあるわ」
だが。茶姫は引く様子は無い。
「本を大切にしないなんて!」
そして、きっ、とディールクルムと『
「絶対に、
——パァン!
そう弾ける音と共に、茶姫の胸元からレインボーパクトが現れた。
「これ、なにかしら」
キラキラと輝くそれに、茶姫は戸惑う。
「これ! 受け取って!」
とパレットが投げよこした指輪を受け取り、我に返った茶姫は、指輪とコンパクトを構えた。
「『レインボーパクト』!」
茶姫は声高らかに宣言する。
そして、緑色の光と風の奔流に包まれ——
「爽やかな安らぎの葉! 癒す心の色、『フォリウムミント!』」
ビシッ! とポーズを決めた緑色の
「な、なんてこと?!」
またしても増えた
「『グリーンリフレクト』っ!」
緑のドーム状の物体が『
そして、両の手の指を真っ直ぐに伸ばして揃え、両手の人差し指と親指で輪を作る。
「『グリーンブレス』っ!」
途端にそこから噴出した緑の輝きに『
それが止んだ頃には『
「つ、次こそはっ!」
そう捨て台詞を吐き、ディールクルムは姿を消した。
「よかった。本達も元の姿に戻ってくれて」
周囲を見回し、フォリウムミントは安堵する。それと同時に
×
ディールクルムは意気消沈して拠点の洋館に戻った。
そこには、当然のようにウェスペルとディエースが居る。
「ま、
そう、ディールクルムは端的に報告した。
「あと、本を使った『
そう言い捨て自室へ戻って行く。
「じゃあ、次は俺が行く」
とウェスペルは淡々と告げ
「好きにしろ」
とディエースは興味なさそうに本に視線を落とした。
×
「
と言い合う
「じゃあこの子ももっと撫で放題、ってことね」
と、
「ふふー茶姫は撫でるの上手だねー」
パレットも満更でもなさそうだ。
その様子を、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます