第6話 一か月後。順調にレベルアップさせる



■ 1年2月5日 06:00 ■


仮想空間で目覚めてから、一カ月がたった。


時間の経過は、一日は24時間、一カ月は30日だった。たぶん一年は12カ月で設定されているのだろう。毎日、ボッチのまま同じ生活が続いているけれど、さほど辛くはない。


朝は6時に起床だ。実に健康的。


まず、自分に「クリーン」のスキルをかける。水を汲みに行って顔を洗っても良いのだけれど、どうせ食事も水も必要としない体だ。水汲みするより、スキルの訓練に当てる方が効率的なはず。


最初は「清掃」のスキルを使えば良いのでは?と思ったのだけれど、自分を掃除するイメージに少し抵抗があったから名称を変えてみた。すると、清掃とは別に「クリーン」のスキルが現われたのは少しびっくり。体をきれいにするのは清掃のスキルではなく、クリーンのスキルだったみたい。


これが、女神様が言っていた、新しいスキルが「自然と生える」ということか……10年頑張っても生えないことがある、という話だったみたいだけれど、一回試しただけで生えることもあるんだ……うん、ラッキー。


スキルを使って顔を洗ったら、すぐに「転移」スキルの訓練を始める。


MPが0になると気絶してしまうから、MPが減ったら、鑑定で自分のステータス確認を続けて行い、MP1になったら訓練を終える。MPが1でも残っていれば、気絶することはないからね。少し気分が悪い感じはするけれど、十分、耐えられるし。


そして、次は運動の時間。


MPがまだ少ないから、今あるスキルの訓練はすぐに終わってしまう。そこで、体を動かすことにした。もちろん今の体は仮初かりそめの肉体だから、筋力などがつくことはないだろう。でも、「力」は記憶できなくとも「技」なら記憶できるのではないか、と思いついた。


実際、毎日、5時間ほど剣で素振りをしたら、20日目に「剣術」という普通スキルが生えてきた。ちなみに、素振りしている剣は、ベッドの下から見つけた収納箱の中にあったもの。


そして今は、素早く動けるスキルが手に入らないかと、毎日3時間ほど走っている。できれば高速移動のスキルが欲しいので、半分はダッシュだ。


まだスキルは現われていないけれど、頑張って続けていれば、女神様に見せてもらったスキル一覧にあった「疾走」の普通スキルが手に入ると思っている。


で、運動を終えたら、MPが少し回復しているので、再び、転移スキル、鑑定スキルの訓練。


これで、だいたい夕方になるから、後は、読書の時間だ。


ベッドの下の収納箱には、剣の他に、本がたくさん入っていた。魔物や生物、国、職業など、転生先の世界の情報が書かれた本が多かった。その他、小説のような本もあったので読んでみると、意外と面白い。今は、暇な時間が多いから、まじ女神様、有能。感謝。


暗くなったら灯りのスキルを使う。スキルを解除しなければ、一回発動させれば、6時間ほど持続できる。白く光り続ける球を部屋に浮かべて、読書を続ける。


そして11時になったら就寝だ。


まず、MPが減るまで治療のスキルを使う。傷がなくても、使った部位がボーッと光り、スキル自体は発動していることが感じられる。もっとも、癒された感じはしないから、無駄使いなんだろうな、きっと。


後は、自分に対して連続して鑑定を使ってMPを1まで減らし、最後は、ベッドに横になってから、もう一度鑑定を使えば、気絶落ちだ。


魔力欠乏症の気分の悪さは慣れてきて、あまり苦痛ではなくなった。というか、苦痛を感じる前に気絶しているみたい。果たして気絶落ちが良いのか分からない。でも、翌日はすっきり起きれるし、何よりMPのベースの量が増えているから、成長させる訓練だと思っている。


ちなみに、スキルのレベルアップでのMPの成長は、あまり感じれない。たぶん、まだスキルのレベルが低いせいなんだろう。


で、一カ月たって、ステータスは、こうなった。



種族:人(魂)

名前:湊

LV:-

HP(体力):-

MP(魔力):43

魔法力:G

攻撃力:-

精神力:G

防御力:G

素早さ:-

運:G


生活スキル:言語理解(LV5)、清掃(LV3)、クリーン(LV3)、料理(LV1)、灯り(LV3)


普通スキル:鑑定(LV9)、察知(LV1)、耐性(LV1)、治療(LV4)、転移(LV7)、剣術(LV17)


特殊スキル:-


パッシブ:-



剣術のレベルが一番高いのは、錬度が稼ぎやすいからだと思う。素振り1回で錬度1みたいだからね。


ただ、漠然と素振りしても錬度は得られない。最初の頃、試しに、座ったまま手だけ素早く振ってみたのだけれど、100回振ってもレベルは上がらなかった。しっかり構えて体全体で剣を振る。さらに、錬度を高める意識を持つことも重要。


練度、つまり「訓練の度合い」なのだから、手抜きでは増えるはずがない。当たり前と言えば当たり前。


魔法に関するスキルは、物理的な剣術のスキルとは少々勝手が違っている。


例えば、転移のスキルを使う際には、魔法を行使するイメージを持つことが大事。魔法を使った結果がどうなるのかをイメージする。転移の場合は、移動した後の自分の状態を頭に思い描く感じかな。「灯り」や「クリーン」も同じで、発動した灯りやキレイになった自分をイメージすれば良い。


とにかく今は、いろいろと試行錯誤しながら、全てのスキルのレベルアップに勤しんでいそしんでいる状態だ。


手に豆ができることもなく、疲労も感じない体だけれど、しっかり素振りをすると、一時間千回ぐらいの錬度にはなる。だいたい毎日5千回の錬度が稼げていて、今までの累計の練度はだいたい15万回ぐらい。


二日前に、剣術のスキルは、レベル17になったけれど、次のレベルアップは、必要な錬度が約13万回だから、1か月後ぐらいになる計算だ。


前の世界でのゲーム体験があるからか、同じ動作の繰り返しをするだけなんだけれど、レベル上げの作業は楽しい。もちろん、レベルが上がれば上がるほど、次のレベルアップが大変なことは分かっている。でも、少なくとも今は順調にレベルは上がっていて、毎日、成果が確認できることが嬉しい。


転移のスキルは、レベルアップで転移できる距離が伸びた。今は最大100メートルほど先まで転移できるかな。


もっとも、100メートルも転移するには、MPが10必要だから、普段は、錬度をかせぐため短い距離の転移で訓練している状態だ。


ちなみに、最初はMPが2必要だった近くへの転移も、スキルのレベルが上がると消費MPが1に減った。それでも、一日に行える錬度は、まだ50回にも到達していないけれど……


MPは、気絶落ちすれば朝には満タンに回復している。でも、日中の自然回復量は少ない。運動しているから余計に回復が遅いのかもしれないけれど、8時間で10ほどだ。


それにしても不思議ななのは、仮想空間で仮初の肉体なのに、スキルやMPなんかが成長していること。


体は、疲労も感じず、食事も必要としていない。排泄もないし、アレが溜まる(?)こともない。このまま枯れて立たなくなるしまわないか、ということが少々気がかりなくらい……


とはいえ、寝ようと思えば寝れるし、叩けば痛みもあり、転べば擦りむいて血も出る。喜びの感情も、辛い感情も、楽しい感情も浮かんでくる。食事とか排泄ができなくても気にするほどじゃない。


まあ、今は魂だけらしいから、なんでもありなのだと思うことにしている。元々、異世界転生なんて、人が理解できる範疇を越えているわけだから……


最初の頃は慣れずに、あれこれ考えたこともあったけれど、最近は、深く考えないで現実に流されることにした。その方が楽だし。


頑張ろう。


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