第2話 スキルについて


そして、女神様は説明してくれた。


これから転生する世界は、剣と魔法の世界で、文明レベルは中世ぐらい。王様、皇帝が国を治めるところが多い。魔物もいるし、エルフやドワーフ、精霊、魔族もいる。


科学は発達していないが、僕が暮らしていた世界の文明の利器を、魔法が補完する形なので、さほど生活に不便を感じることはなさそうだ。


まさしく、異世界転生のお手本のような世界らしい。


個々の力は、ステータスとスキルに依存するところが大きく、それらを上昇させるには主に二つの方法がある。


一つが、魔物を倒して「魂の力」、いわゆる経験値を取得して成長させる方法。主にステータスの上昇に関わる。


もっとも、力を得られる魂は、転生しない魂に限るらしく、人や動物を倒しても経験値は得られないし、転生する魂を持つ上位の魔物も同様だ。


もう一つが「練度」で、スキルの成長に関わっている。


この世界で主に使われているスキルは、生活スキル、普通スキル、特殊スキル、ユニークスキルの4種類でレベル制だ。その他、「エキストラスキル」というのもあるらしいが、今は誰も持っていない特別なスキルらしい。


生活スキルは、その名の通り、生活に特化したスキルで、料理や清掃、解体、灯りなど。


生活スキル以外のレア度は、ユニーク>>>>特殊>普通、の順番となる。


但し、普通スキルの上位レベルだと、特殊スキルの低レベルよりも力が上になることもあるらしく、ユニークスキル以外は、スキルのレベルが重要になるそうだ。


ちなみに、ユニークスキルは「勇者」「賢者」「聖女」「剣聖」といったファンタジー感満載のものが多く、所持する人はごく僅かだ。


特殊スキルは、普通スキルの上位互換の物が多く、例えば「剣術」の普通スキルの上位互換が「剣技」という特殊スキル、「治療」の上位互換スキルが「再生」、といった具合。


そして、スキルのレベルは、そのスキルを使用した回数、つまり錬度により上昇するのだけれど、スキルアップの条件はかなりエグかった。


何故なら、レベル上昇に必要な錬度回数は、常に倍だからだ。


最初はレベル1だから、2回使用すればレベル2になる。でもレベル3になるにはその倍の4回、レベル4になるにはさらにその倍の8回、といったようにレベルが高くなると、要求される錬度もどんどん上がる。


例えば、スキルレベルが10に至るためには、錬度の回数は合計で1022回必要だが、レベル20では約100万回で、レベル30ならば10億回以上になる。


世界の頂点に位置する生物の一つ、ドラゴンの中には、レベル40以上のスキルを持っている個体もいるそうだ。その到達に必要な錬度回数は「億」を越えて「兆」だ。人には絶対に到達できないレベルと言える。


なぜなら、人が生まれてから死ぬまでの時間、寝ることも休むこともなく、1秒に1回ずつスキルを使い続けたとしても、100年で約30億回が限界だから。


「兆」の回数は、何千年、何万年と生き続けるドラゴンにしか到達できない域だろう。


ドラゴンの基本スキルはブレスだけれど、レベル1でも街を壊滅できる威力だそうだ。そして、レベル40のブレスは論外になるみたい。本気なら、星そのものを消し去ることができるのでは、と言われている。


このようにスキルのレベル差をひっくり返すことは容易でなく、だからこそドラゴンは生物の頂点にいると考えられているそうだ。



そして……スキルを取得するための方法は、意外と単純だった。


生活スキルや普通スキルの一部は、同じ動作を繰り返すことで身につくことがある。こうして、自然とスキルが発生することは「スキルが生えた」と呼ばれている。


例えば、毎日料理を続ければ、いつかは料理のスキルを得ることができる。剣術のスキルも、毎日剣を振っていれば身につけることが可能だ。


もちろん、いつ生えてくるかは分からない。3日後のこともあれば、10年続けて生えないこともある。


一説では、スキルが生えて欲しい想いが強ければ強いほど、生えやすいと言われているようだけれど……ただし、身についた段階では、スキルのレベルは必ず1から始まる。3日後に生えても10年後に生えてもスキルのレベルは1。なので、スキルを強化できるるかどうかは、生えたあと次第、ということみたい。


でも中には、普通では、身につけることが難しいスキルもある。


特に、魔法関係のスキルは、「スキルを生やす」ことが非常に困難だ。スキルがなければ魔法の訓練すらできないから、「卵が先か鶏が先か」と同じ問題になるようだ。


なので、こうした特別なスキルを覚えるには「スキルオーブ」を使うことが必要になる。主にダンジョンなどで見つかることが多い。


でも、スキルオーブの数は非常に少ない。種類によっては国宝の扱いとなっている。当然だろう。例えば広範囲攻撃魔法のスキルがホイホイ手に入ったのでは、治安は維持できなくなる。普通の人が簡単に手に入れられることは、まずないと言えるらしい。


そこで――スキルを覚えるメインとなっているのが「ギフト」だ。


この世界では、10歳になると神様から、ギフトと呼ばれるスキルを授かることになる。


どういったギフトを、そしていくつのギフトを授かるかについては、決まった法則はなく、神様次第と考えられている。


このギフトを、女神様は転生の特典として、今回、特別に僕に授けてくれるらしい。


ラッキー。


僕は、特別な力が貰えると喜んだのだが、その後の女神様の言葉に、考えさせられることになった。


「ユニークスキルを選んだらギフトは1つだけになるわ。特殊スキルなら2つあげる。普通スキルは5つよ。どれにするかを選んでね。

ちなみに普通スキルだったら、ギフトとして渡せるリストの中から、全て希望のスキルを選べるけど、特殊スキルは選べるのは1つだけ。特殊スキルの残り1つ、それとユニークスキルは抽選ね」


「抽選って?」


「いくつか方法はあるけど、ガチャを選ぶ人が多いわね」


なんと。ガチャか……ギフトの抽選のイメージにはピッタリかも。


「ちなみに、特殊スキル1つと、普通スキルを2つ、といった組み合わせで選ぶことはできないんですか?」


「それは駄目ね。選べるのは、ユニーク、特殊、普通から三択になるわ」


……なかなか悩ましい選択だな。


「時間は気にしなくていいから、よく考えて。決まったら声をかけてね。そうそう、言語理解といくつかの生活スキルは、転生者には標準セットでついてるから安心してね」


女神様はそういうと手を軽く振った。


目の前の空中にボードのようなものが浮かび上がる。そこにはギフトで貰うことが可能なスキルの一覧が表示されていた。


さらにいつの間にか、女神様の姿が無くなっていた。余計な雑念を消せるようにと配慮してくれたのかな。


さて、どうしようか……


ボードはタッチパネルのようになっていた。一覧で表示されているスキルのリストを、ボチボチと押しながら、簡単な説明を見ていくことにした。



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