第2話

 学校の帰り道。風の冷たさを感じ始めた木々が少しづつ赤く色つぎ始めている。

「そういえばさっき、2丁目のおばさんがって言ってたけど、なんのこと?」

「トモヤは知らないのか。2丁目に柳田さんっていうおばちゃんが住んでるんだ。」

「へぇ。全然知らなかった。それがどうかしたの?」

「その柳田さんの家の近くに、行き止まりの道路があるの知ってるか?」

「あっ、坂道になってるとこ?」

「そう、それ。」

「その坂道がどうかしたの?」

「本当に何も知らないのか!トモヤらしいな。

 行き止まりに続く坂道を登り終えると、一緒に登った相手の将来が見えるらしいぜ。」

 実は聞いたことがあった。2丁目の坂道の噂については。根も葉もない噂だけど、この手の話はタイキが好きな話だ。

「今度、一緒に登ろうぜ!」

「えっ。」

 タイキは目をキラキラさせながら、僕に話しかけていた。正直、嫌だった。僕には何にもない。習い事もしてないし、成績だって中の中。学校の行事で何か目立ったことだって1個もない。そんな今の僕の将来をタイキに見られたくない。タイキの将来はきっと、眩しいんだろうな。僕の人生を幾つ積み重ねても届かない高みにタイキはいるんだ。

「いいよ、今度一緒に登ろう。」

 だけど、僕の人生に唯一誇れることは、タイキの友達だってこと。僕の将来はタイキと笑ってお酒でも飲んでいたら嬉しいな。

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僕ら、あの坂の上で @ishikawa0330

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