第10話 腐れ縁
「ゲストルームは全部で4部屋あって、今は2部屋埋まってる。
ダイニング挟んで反対側に大浴場があって、昼の12時から30分は清掃中だが、それ以外はいつでも入浴可能だ」
ゲストルームのある4階。
そこへはエレベーターで行けて、最初の部屋は共有スペースのダイニングキッチンになっていた。
ちなみにキッチンはプロ仕様で、業務用のコンロにスチームコンベクションオーブンまであり、冷蔵庫や冷凍庫も業務用だ。
カウンター席やテーブル席もあって、見た目はオシャレなカフェレストランといった感じだった。
「完全に店じゃん」
「シロの趣味」
「内装は師匠の趣味でしょ」
食べる事も作る事も好きなシロウと、インテリアに拘りをみせるクロウ。
結果、共有のダイニングキッチンがオシャレなカフェレストランへと変貌したらしい。
「さて、早速メシだな」
「先に風呂だよ、このダボが」
いそいそと調理場に入ろうとしたシロウの首根っこ引っ掴み、ダンジョン探索した所だろうがとクロウは4階にある大浴場へ迎う。
ちなみに男湯女湯と分けてあり、個人所有とは思えない立派な浴場だ。
ガチャ
と、不意に扉の開く音がして、ゲストルームから1人の老人が現れた。
浴場へ向かっていたクロウ達は足を止めて老人を見る。
「おう、おかえり」
「ただいま」
「ただいまァ」
「ただいま、アギさん☆」
綺麗に整えられた髭の老紳士。
夜明けの空にも似た不可思議な眼をした彼の名は
件の先に落ちてきた転移者だ。
落ち着いた雰囲気の彼は、どうやらお茶を淹れに出てきたらしい。
「そちらは………」
「あん?」
そうしてシヅキに気付いたらしいアギと、アギに気付いたシヅキの目がパチリとあった。
「「………」」
「どしたん?」
見つめ合うアギとシヅキ。
不思議そうにソラが首を傾げて2人を見れば、
「
「おまっ、
同時に声を上げた。
「ヴァッハッハ!なんぞその姿っ!?」
「やっかましい!てか、なんで居るんだよアンタっ」
お互いを指差し合って、笑うアギに怒鳴るシヅキ。
「儂はダンジョン散歩しとったら落ちたんよ」
運営の作為を感じたがのと妖しげに
「で、なんでお前はそんな愉快な姿になっちょるんよ?」
「愉快とはなんだっ!
確かに愉快だけどもっ!」
魔法少女だぞっ!?と怒鳴るシヅキに、アギはゲラゲラと指差して笑う。
「何?知り合い?」
「おう、コレが子供の頃から知っちょるわ」
クロウが聞けば、アギはシヅキの頭を撫でながら答えた。
シヅキは怒ってアギの手を払ったが。
「腐れ縁てやつだよ。
俺を育てた
ガキの頃から宿に来ては人を小馬鹿にしやがるんだ」
「おもろいで、仕方あるまい?」
「仕方なくねーわ!」
俺をオモチャにすんな!と吠えるシヅキだった。
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