第8話 叢雲 紫月
「なーんで、アンタらは日本じゃ珍しい転移者拾っちゃうかね」
あの後、とりあえず魔法少女を連れてダンジョンを抜けた烏金。
そんな彼らを待っていたのは、配信で状況を知っていたらしいギルド職員達だった。
即座に連行され、探索者協会…通称ギルドの会議室に4人並ばされる烏金と魔法少女。
「目の前に堕ちてくんのは俺らのせいじゃねェだろうが」
「だからって配信である事ある事言うんじゃねーわ!」
「ある事ばっかりなんじゃねェか」
こういう場合、烏金は暗黙の了解で全てをクロウに任せる事になっていた。
シロウもソラも知らん顔でお口チャックだ。
「アンタ達のせいで政府のお偉いさんもギルドもテレビのニュースもネットニュースも大騒ぎよっ!?」
「
「日本は前例のない事に弱いんだよっ!」
「で、初動が遅れたせいでこのザマと」
「転移者とかレアケースなのっ!」
「米国や露国、隣国にだってポロポロ堕ちてきてんだ。
遅かれ早かれこうなってたって。
何より、そのレアケースを俺らが引いたおかげでスタンピードとかは起きてねーじゃん」
「「「ぬぐッ」」」
実際、他の探索者が転移者を見つけていればどうなっていたかなんて分からない。
たまたま転移者のリスクを理解していた烏金が拾ったからこそ、間違いが起きなかったとも言えるのだから。
「とりあえず、この子の処遇か…」
「保護と監禁の線引き何処だよぉ」
「政府からはなんて?」
「
「本部は?」
「
「「デスヨネー」」
転移者の情報は欲しいが、つい最近お隣でスタンピードが起きたばかりだ。
下手に扱うとそのリスクは国を巻き込んでしまう。
政府が手をこまねくのもギルド上層部がとりあえず知らん振りするのも仕方なかった。
「なァ?魔法少女」
「おれはまほうしょうじょじゃねえ」
「名前は?」
「まずはなのんのがれいぎだろ」
「そりゃ失礼。
俺ァ
「おれはむらくも。
むらくも しづき」
見た目と違い魔法少女…シヅキは大人のように受け答えをする。
椅子にあぐらかいて、背もたれに身を任せた偉そうな格好で。
「で、しづきは何処まで分かってる?」
「………オンナときん○まいたくなるまでヤリまくったあと、きづいたらそらからおちてた」
「「「……………」」」
沈黙が支配する部屋。
それはもう可愛らしい魔法少女の口から金○は閉口ものだろう。
「ヤリまくった?」
「オトコにうまれりゃ、ムスコをかつやくさせたいだろっ!?
つか、キモチイイことすきだろっ!!?」
もうないけどっ!と叫んで、魔法少女は天を仰ぐ。
「あー…呪いの効果か?」
ダンジョンで拾った紙をぴらりと見せれば、ミタイデスネ!と嘆くシヅキ。
「ホントのおれさまは46のオッサンなのっ!
さけもたばこもやんねーけど、オンナだけがゆいいつのタノシミだったのにっ」
息子が奪われたっ!とシヅキは自身の股間を押さえてみせた。
「46のオッサン?」
「5、6歳の女の子にしか見えないが…」
全員が戸惑っていれば、シヅキはキッ!と目付きを鋭くして、
「しぶさあふれるナイスミドルだったんだっ!!!」
と叫んだ。
同時に、
ぼふん!
と響く情けない音。
「「「え?」」」
そうして、椅子の上には胡座をかいた長髪でクロウやシロウに比べれば少し華奢なスーツ姿の美中年が1人。
髪の色はピンクと紫の間位で、それがまた妙に似合う不思議な男だ。
「………」
そうして男は自分の手を見て、脚を見て、股間を揉んで、
「おかえり俺ぇーーー!!」
と、自身を抱きしめた。
ぼふん!
まぁ、秒で魔法少女に戻ったけれど。
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