第6話 転移者
「ここで解説な」
未だ落下の衝撃から立ち直っていない魔法少女から離れ、クロウとソラはコメント達への解説を始める。
「転移者ってのは、ダンジョンの向こう側から堕ちてくる連中の事だ。
ダンジョンの向こう側…いわゆる異世界って奴だな」
「そんなのあるの?」
「あるとされてる。
実際、転移者の中にはホモ・サピエンスじゃない人種もいるからな」
「え?そうなん??」
「そうなん。
ただ、転移者は運営に保護されてっから、人体実験とか搾取とか出来ない仕様になってんのよ。
だから研究は捗ってねェけど、世界各国が保護対象にはしてる。
何せ転移者の自由を奪おうとしたり、騙して利用しようとしたらダンジョン溢れるからな」
「え?」
:は?
:初耳なんだが???
:どいうこと?
:待て待て待て
:エビデンスは?
「エビデンスも何も、隣国で
:え?大氾濫て…
:あの、去年のアレ?
ダンジョンが発生してから幾度となくあったスタンピード。
中でも去年隣国で起きたスタンピードは歴史的にも大きなもので、人的被害も経済的な被害も相当だった。
「ありゃあ、たった1人の転移者を監禁した結果だ」
だから監禁施設の周辺が念入りに壊されたし、転移者を利用しようとしたらどうなるかを知らしめるためにスタンピードはより凶悪なものになったとクロウは言う。
:でもでもでも!そんなんニュースになってねえじゃん!
「なってねェの日本だけだから」
:え?
:マ?
:あー…フェイクかと思ってたわ
:ガチか〜…
:米国でニュースしてたわ、確かに
:露でもしてたろ?
:フェイクだと思うじゃんよー
「米国と露国は転移者多いからな。
割とシャレになんねェんだと思うぞ?転移者関連のリスク」
「日本は?」
「この国の場合、転移者の前例があそこの奴含めてまだ2例目な上に、1例目が半端ない奴だったから政府としても触らぬ神に祟りなしって事で情報を隠してるんだろ」
そういう体質じゃん?問題が起きてからしか動かないとクロウは肩を竦めた。
:ソレ、ここで言って良かったん?
「つか、言っとかねェと堕ちてきたアレの説明出来ねェじゃん。
誘拐してきた云々なんてでっち上げられたら面倒でしゃーない」
アレ、とクロウが親指で指した先にはようやく落ち着いてきたらしい魔法少女が、今度はまいさーーーん!とイミフな絶叫を上げている所だった。
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