第5話 ASMR

「あー…保護したいのだが、触れても大丈夫だろうか?」

「はいぃっ!?」


少女とほぼ同じ位まで跳んだシロウの最初の言葉。


:天然かっ

:この状況下でそれ聞いちゃうシロ先生草

:聞いてる場合かっ!

:おんにゃの子が汚ねー逆花火になっちゃうううっ

:つか、かわええっ!

:ンなこといってるばあいかっ

:昨今、子供に触れるのも色々引っ掛かるからなぁ

:この状況下で気にする事っ!?


「きっこえねーよ!」


叫ぶ少女。

まぁ、凄い勢いで落ちているのだから、風圧や風音で声なんてまともに届きはしないだろう。

スカイスラッグ越しであれば、魔法的なアレコレでクリアに聞こえているが。


「た す け る か?」


察したシロウは、ゆっくりと口を動かして見せる。

配信越しには口の動きに合わせてテロップが走る親切仕様だ。


「いえす!」

「分かった」


少女が汲み取り応えれば、シロウはすぐに手を伸ばして少女を抱き込んだ。


「ジっとしていろ」


耳に響く柔らかな低音。

それはきっちりと配信にも乗り……。


:切り抜きーーーっ!!!

:今の切り抜き!

:濡れた……

:シロウ様ーーーっ!!!

:ふぁあああああっ!!!

:くぁw背drftgyふじこlp;@:「」


コメントが錯乱した。


「シロ先生、イケボだもんねぇ」

「腹ペコ怪獣は声だけなら某名無しのネズミ並だからな」


但し、囁く言葉の7割は空腹を訴えるものだが。


「そろそろ落ちてくるな」


クロウの言葉の後、落下しながら勢いを殺すシロウの姿が配信に映された。

同時に、配信画像は2画面となり、映されたクロウがツイと指を動かす。


「風よ」

「うわっ!」


びゅお!とクロウの周囲を逆巻く風。

その風に指向性を持たせ、クロウはシロウの真下から彼を吹き上げるように吹かせた。


シロウ自身の空気を踏むという非常識な行為とクロウの風で落下速度は落ち、シロウは魔法少女を抱えたままふんわりと着地する。


本来ならクロウの補助無しでも無傷で着地出来たのだが、少女へのダメージを軽減させるために2人は協力したようだ。


:あの落下速度を普通に殺してて草

:烏金マジ意味わからん

:あの上昇気流の中でバランス保てるの謎

:つか、あんなふんわり着地出来るもん?

:猫なら出来るんじゃね?

:ニンゲンじゃないっていう…


コメントがザワザワする中、


「大丈夫か?」


ゆっくりと腕を開いて抱えていた少女を見やるシロウ。


「ふへ〜〜〜…」


目をグルグルさせる少女。

が、体は無傷なようだ。


「痛いところは?」

「なひ〜」

「気分は?」

「ンー、だいじ、ぶ」


5、6歳と思われるピンク髪の魔法少女。

それはもう、典型的な魔法少女。

フワッフワの白いパニエがチラリとする、フリルやリボンを多用した花みたいに甘い衣装の魔法少女。


:魔法少女だ

:可愛い

:ちょ!アップ!!ソラちゃんその子あーーーっぷ!

:ソラくん!その子、モザイクかかってない!

:年齢制限ひっかかってねーぞ!


「え?え??なんでっ!?」


慌ててスカイスラッグ達を遠ざけて、ソラは魔法少女を視聴者の目から引き剥がす。


「あー…たぶん、転移者だな」

「転移者は見た目と実年齢違う事があってな、その場合見た目が幼くても実年齢がクリアしてると見なされてソラウシ共のレーティングをすり抜けちまうんだ」


まだ目をグルグルさせてる魔法少女を支えてやりながらソッと立たせたシロウは、ダンジョンは他次元と重なる事があって、その時にこうして堕ちてくると付け足した。


:合法ロリきたあああああっ!

:お巡りさん、コイツです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る