第3話 お肉

「初見さんもいると思うから、一応説明するねー?」


何処までも続く夜の丘陵。

地球では見られない程に大きな月が見下ろすそこは、夜でも視野が奪われる事の無い程に明るい。

常夜のこの階層は、決して太陽が顔を出す事はなく、出てくる魔物はエアレーと呼ばれる牛の魔物のみ。

後はコンコンと湧く泉と、丘陵に広がる草原だけがこの階層の特徴だった。


「エアレーっていうのは河馬くらい大きくて、象のしっぽと猪の顎を持つ角の長ーい雄牛の魔物なんだ。

ドロップアイテムはエアレーのお肉各部位と角、魔石だよ☆」

「俺らの狙いは肉オンリーだけどな」

「ヒレ、サーロイン、カイノミにリブロース……骨付きも良い…」

「先生、ヨダレヨダレ!」


そんな丘陵で、スーツの男性2人となんちゃってセーラー服な女の…オトコの娘がわちゃわちゃと騒ぐ姿はなんともシュールだ。


「っし!じゃあ、早速エアレー狩りだ」

「肉!」

「シロ先生、はっや」


遠くに魔物の影が見えると同時。

タン!と軽い音と共に、白いスーツのシロウが躍り出る。

まるで野生の獣のようにしなやかで軽やかに。

全身の筋肉をしならせて、魔物の元に一足飛びで辿り着いたシロウの姿をシロの契約しているシロタエイロウミウシに似たスカイスラッグが追い……直後、爆発音。

ドゴン!と激しい音がして、スカイスラッグの映像には弾け飛ぶ魔物の巨躯が宙を舞う所が捕らえられた。


「たーまやー」


呑気にそんな事を言いながら歩いてシロウを追うクロウ。

その後に続くソラは、相変わらず凄いなぁ〜と零した。


:凄いなんてもんじゃねーんだよなぁ、これが

:つか、エアレーって一応危険度Bランクのハズなんだけど

:ちな、3頭以上の群れだとAランク、10頭以上ならSランク相当な

:それを身1つで壊滅させてんの草

:肉の雨に歓喜してるシロ先生マジ推せる

:てぇてぇ

:おい、なんか湧いたぞ

:いつもの事だろ


「信じられるか?

アレでまだ3日分に足りないんだぜ?」

「先生、ガチで食べるもんねー。

本気で食べるならアレ1日で食べちゃうし」


2tはあるエアレーからドロップする肉は1頭あたり約100kg。

大体1kgの肉塊が牛乳パックサイズだと思って貰えれば、1頭倒してドロップすれば結構な量が手に入る事は想像にかたくない。

ただ、ドロップは確定ではなく、10頭程の群れを倒して100kgの肉を回収出来れば成果としては良い方で、その美味しさから人気は高いが超高級肉として有名なエアレーの肉。

それが200kg程ドロップしているというのに、これで足りないとは……。


:ソラちゃん、またシロ先生の爆食い動画配信して欲しー

:食ってるだけなのになんか癒されんだよね

:それなら私は断然!!クロ師匠の雑談動画希望!!!

:いや、それなら俺はシロさんの料理動画見たい!

:おいやめろ!アレはマジで飯テロだからっ


「お肉回収してるから、たぶん明日か明後日には料理動画あげるよー?」


:ひゃっほー!

:ダイエット中に鬼かっ!!

:俺、肉とビール山ほど買っとくわ


悲喜交々なコメントに、ソラはにっこり笑って楽しみにしててね〜?とクロの契約しているクロシタナシウミウシに似たスカイスラッグに手を振った。

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