第2話 ダンジョン配信者
―――特に、数多の絶滅を誘発した人類は頑張るように―――
その日を境に地球は急激な変化を起こした。
あらゆる場所に地下鉄の入口に似た物が出現し、入ってみれば中はいわゆるRPGの迷宮。
しかも、ステレオタイプの魔物や都市伝説の怪異が
食材に素材、魔石に装備……人類は鼻先の人参に釣られ、挙って
「こんにちわ!
本日もかわいいかわいいソラちゃんが実況するよー☆」
:待ってましたっ!
:こんそらー
:こんしろー
:こんそら〜〜〜!
:コンカラーーーーッ
:今日はセーラー服なソラちゃんかー
:やっば!男の子なのに似合い過ぎて萌え死にそうっ
ともすれば、迷宮を知らしめたい
迷宮にて契約出来るウミウシに似た使い魔。
空中を這うこの使い魔はスカイスラッグと呼ばれ、迷宮内に限って見たものを映像データに変換してくれるのだ。
配信も録画も対応していて、なんならショッキング映像なんかには勝手にモザイク処理までしてくれる。
「ではクロ師匠!今日の探索する迷宮をご紹介下さい!」
:ししょー!
:今日はどこのダンジョン行ってるんッスかー?
しかし、良いのか悪いのか迷宮内での犯罪行為や迷惑行為は漏れなく撮影し、勝手に配信サイトに上げてしまう事さえあり、一部の探索者からは不評だ。
だが、スカイスラッグは契約しなくても迷宮探索時には絶対着いてくる。
良くも悪くも注目される探索者には、5匹くらい着いてる事さえあった。
が、契約しておけば契約者の望む画角で撮影や編集をしてくれるので、配信者は高確率で契約している。
今まさに配信中のパーティ“
スカイスラッグに向け、大袈裟な身振りを交えて視聴者にアピールするソラ。
「ウーッス、烏金のクロウだ。
今日も暇人どもが集まってるみてェだなァ?」
:そりゃあもう!
:つか、いい加減に課金させて下さいよー
:投げ銭拒否とか、配信者なのにイミフ
そんなソラにコメントを求められたのは、黒髪長髪で漆黒タレ目なイケおじ、
スーツ姿で前を少し寛げた彼には妙な色気があり、探索者と言うよりはホストのような雰囲気がある。
因みに“暇人ども”というのはリスナーの名称だったりした。
「投げ銭とかで配信左右されんのやだから
んで、今日は2892番ダンジョンの深層“月が見下ろす丘陵”でエアレー狩りだ。
当然、ウチの大食らいの食費をちっとでも浮かす為な」
クイッと親指で指した先には、何処か憂いの漂うサングラスなスーツの男性。
金髪に褐色の肌をした筋肉質な彼は
見た者に猫科の猛獣を彷彿とさせる獰猛さが見え隠れするのは、気のせいではないだろう。
「ハラヘッタ……」
「テメェはそれしかねェのかッ!」
:さすが先生!
:いつでもペコペコペッコリーノ!
:だから、投げ銭さしてくれたら先生養うってー
:課金させろー!
口から零れた言葉は空腹を訴える言葉だったが。
「シロ先生は常にお腹減ってるよねー?
飴あるけど食べる〜?」
「食べる」
身長も筋肉量も大きいのだが、飴くれと手を出す姿はどこか幼く見えた。
「はい、どーぞ」
「助かる」
渡された動物の形をしたべっこう飴は、即座にバリバリと噛み砕かれた。
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