第13話どうしてこうなったのか…

もしかしたら夕食時に一杯盛られていたのかもしれない。

何故なら深い眠りから覚めるのに時間がかかったからだ。

身体をベッドに拘束されているような感覚を覚えて目を開けると…。

案の定、僕の身体はベッドに括られていた。

自由に身体を動かすことが出来ずに抵抗をするが、ぼぉーっとして頭が上手に働かない。

「白井さん…何を…」

どうにか口を開いて言葉を絞り出すのだが、ベッドの上で僕に跨がろうとしている白井は答えを返してはくれない。

「ちょっと量が少なかったかもしれないですね」

白井は意味深な言葉を口にすると部屋の隅に置いてある机まで向かう。

机の上には薬箱のようなものが置いてあり白井はそれを開ける。

中から錠剤をいくつか取り出すと自分の口に含む。

そのまま僕のもとまで向かうとキスをして口の中の錠剤を無理矢理に飲ませた。

錠剤を飲んでしまったことにより再び深い眠気が僕を襲い、抵抗虚しく眠りにつくのであった。



深い眠りについている間、何が起きていたのか僕は知りもしない。

けれど目を覚ますと僕は病院のベッドの上だった。

「藤田さん。ここが何処かわかりますか?」

ナースらしき人物に声を掛けられて僕は辺りを見渡す。

「病院だと思います…」

曖昧な答えにナースはバインダー片手にメモのようなものを取っていた。

「どうしてここにいるかわかりますか?」

「いや、わからないです」

「じゃあ自分が誰か分かりますか?」

「藤田光です」

ナースはメモを取り終えると僕に事実を告げるように口を開く。

「恋人さんと心中しようとしていたみたいですよ。幼馴染の女の子が異常を感じて通報をしてくれて助かったんです。その娘に感謝してくださいね」

「え?恋人は…白井さんはどうなったんですか?」

僕の問にナースは首を左右に振る。

「決まりで教えられないんです。二人は距離を置くようにとご両親と警察の判断で状況を教えることが出来ないんですよ」

「お互い助かったんですよね?」

僕の必死な問いかけにもナースは首を左右に振るだけだった。

「まだ薬が身体の中に残っていますから安静にしていてください。喉は渇いてないですか?」

「そう言えば…乾いています」

僕の言葉を耳にしたナースはコップに水を入れてこちらまでやってくる。

「ゆっくり飲んでくださいね」

その言葉に頷くとからからな喉を潤す。

再び来た眠気に身を任せるとそのまま深い眠りに付くのであった。


再度起きるとベッドの脇には両親と夏の姿がある。

「大丈夫だった?だからダメだって言ったのに…私の言うこと聞かないから」

夏は心配そうに僕の手を握り両親は軽く呆れているようだった。

「夏がいるのに他の娘に目を向けるなんて…本当に馬鹿なんだから」

母親は愚痴のようなものを口にすると軽く僕の頭を撫でた。

「いつ退院できるの?」

「明日、検査して異常がなかったら退院だよ」

夏の言葉に頷くと面会終了時間が来たようで皆は病室から出ていく。

「明日。絶対に迎えに来るからね」

夏はそれだけ言い残すと後ろ髪を引かれるようにして帰路に就くのであった。


明日以降どうなるのか…。

僕はまだ知りもしないのであった。

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