第12話なんだ…?
白井にスマホを取り上げられて両親にも誰にも連絡を取ることが出来ずに数時間が経過していた。
つまりは白井の家で数時間、彼女と二人きりの時間が過ぎているということだ。
だが僕が期待していたような展開にはまだなっていない。
先程からずっと二人きりでリビングのソファに腰掛けて映画を観ているという状況だ。
「退屈じゃないですか?」
白井は僕に伺うように訪ねてくる。
「全然。退屈じゃないよ」
返答を返すだけで精一杯な僕は選択肢を間違えないように努めていた。
もしも間違えて彼女からの好感度を下げてしまったとしたら…。
その後のお楽しみの展開がお預けになってしまうかもしれない。
そんな打算的な気持ちから白井の気持ちを慮っていたのかもしれない。
「夕飯。何が良いですか?ピザでも注文します?」
「白井さんの好きにしていいよ」
「本当ですか?」
それに頷いて応えると彼女はスマホをポケットから取り出して操作をしていた。
数分間スマホをいじるとこちらに向き直る。
「三十分程でデリバリーが来るそうです」
「何にしたの?やっぱりピザ?」
「はい。映画を観ながら片手で食べられるので」
「そうだね。お金は?半分出すよ」
「良いですよ。私の家で私が食べたいものを注文したんですから」
「それでも…」
「それなら後で違う方法で支払ってください」
「違う方法?」
「それは後でのお楽しみで♡」
白井はそこまで言うと再びテレビへと視線を移す。
その後のピザが届くまでの三十分間も映画を観ているだけで特筆すべきことは起きないのであった。
宅配のピザが届くと白井は玄関まで向かう。
どうやら何かしらの電子マネーで支払っているらしく宅配方法は置き配だった。
通知が届き白井は玄関の外の荷物置きの上に置いてあったピザの箱を部屋の中に運んだ。
「さぁ。食べましょう」
「いただきます」
ピザを食しながら映画の続きに目を奪われていると白井は唐突に口を開いた。
「食べましたね?」
その意味深な言葉を耳にして白井の方を向くと彼女は怪しく微笑んでいる。
「えっと…」
言葉に詰まる僕に白井はいたずらが成功したとでも言うように笑顔で首を左右に振る。
「冗談です。ヤンデレの真似をしてみました」
「何だ…びっくりするからやめてよ」
「すみません。冗談が過ぎましたね」
そこから夕食を取り時間だけが過ぎていっていた。
「お客さんなので先にお風呂入ってください」
「良いの?」
白井はそれに頷くので僕は風呂場まで向かう。
だだっ広いお風呂に一人で入ると次第に眠気に襲われる。
早く風呂を出て少しだけ眠りにつきたい気分だった。
手っ取り早く全身を洗うと脱衣所に出る。
バスタオルで全身を拭くとサイズピッタリの寝間着に着替えてリビングに向かう。
偶然なのか白井の父親のものなのか…。
寝間着は用意されていたかのようにサイズぴったりだった。
けれど今は眠気が酷くてものを考えるのは困難だった。
「ちょっと眠いから…ソファで寝てても良い?」
白井に尋ねると彼女は僕の手を引いて一室に案内する。
「この部屋を使ってください。ベッドもありますからゆっくり休んでくださいね」
「ありがとう…」
そのままベッドにダイブすると深い眠りにつくのであった。
この後、起きることを僕は何も知らずに眠り続けていた。
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