第11話何かしらの危機…

白井に連れられて彼女の家まで向かう道中で僕の心臓は異常に高鳴っていた。

この後に待っているであろう出来事に思いを馳せることで鼓動の高鳴りは比例するように上昇していく。

ドキドキとした心臓の鼓動が白井にバレないように平静さを取り繕うのに精一杯だった。

だが、そんな僕とは正反対に白井は冷静そうな表情で前を歩いていく。

それが少しだけ不気味というか不可解だった。

けれどそんな些細なことには目を瞑って彼女の後をついていく。

そこにポケットの中のスマホが意味深にも震えた。

何気なくスマホを手に取ろうとすると白井は意味ありげに微笑んで首を左右に振った。

「一応スマホは私に預けておいてください」

理由の分からない言葉に目を白黒させていると白井は微笑みを絶やさぬままに続けて口を開く。

「お楽しみの間に邪魔が入ったら嫌じゃないですか♡」

「あ…」

言葉に詰まっている僕の手からスマホを奪い取るように受け取った白井はそのままカバンの中にそれをしまった。

「もう着きますから。我慢してください」

何の我慢のなのかわからないふりを続けていても意味は無さそうだった。

たしかに僕は今後の展開に期待しているだろう。

しかしながら白井が言っている言葉と僕の期待しているイメージは一致しているのだろうか。

付き合い出した途端に余裕そうな態度に変わった白井も少しだけ気がかりだった。

だが行ってみないことには何もわからない。

この後のことを存分に期待しながら白井が案内するマンションに入っていくのであった。


オートロックでセキュリティの高いマンションの一室に僕は案内される。

鍵がカードキーで複製は不可能なものに思われた。

何をそんなに隠したく守りたいものがあるのか。

僕にはまだ理解することは出来ないのだが…。

それでも恋人がセキュリティの高いマンションに住んでいることには一安心すると中に入室する。

部屋のドアを閉めると勝手にロックが掛かり暗証番号無しでは外には出られない仕組みが完成されていた。

「えっと…」

その光景を目にした僕は完全に動揺して言葉に詰まってしまう。

「安全性のためですよ。閉じ込めたりしません」

白井は美しく微笑むと靴を脱いで僕をそのまま案内する。

「両親は海外で暮らしていて。今は私一人で暮らしているんです」

「そうなんだ…寂しくない?」

「寂しいですよ。だから…」

白井はそこまで口を開くと軽く俯いて言いにくい事でもあるかのようにもじもじとした態度で口を開いた。

「これからここで暮らしてくれませんか?そうじゃないと私…」

「暮らすって…言葉の意味そのまま?」

「はい。一緒に住んでほしいんです…」

「いや…でも僕らは高校生だし…」

「そんな常識的な意見は聞きたくないです。恋人が寂しがっているんですよ?一緒に居てくれないんですか?」

「あぁ〜…じゃあ試しに今日明日一緒に住むってのはどう?」

僕の提案に白井は仕方無さそうに頷いてくれる。

どうにか何かしらの危機からは回避できたのか…。

今の僕にはそんなことすらも理解できずにいるのであった。

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