第10話この後どうなる?

平日の何気ない日々は期末テストで潰されていく。

テスト期間は流石に夏とも白井とも遊ぶことはなく勉強に集中していた。

水曜日から金曜日にかけて三日間のテスト期間が終了すると待ちに待った休日がやってくるのであった。


「おはようございます。起きてますか?」

目を覚まし身支度を整えていると白井からスマホにメッセージが飛んでくる。

「おはよう。起きてるよ。ソワソワしちゃって早起きしすぎた」

「嬉しいです。私も楽しみでいつもより早起きです」

「そっか。今支度しているところ」

「私もです。終わったらまた連絡しますね」

それに了承の返事をするとそこからも念入りに身支度を整えるのであった。


「まさかとは思うけど…テスト明けにデートとかってないよね?」

身支度を整え終わったところでスマホに通知が届いている。

もちろん相手は夏だった。

そのメッセージにどの様に返事をすれば良いのか答えを見つけ出すことが出来ずに悪手だとは分かっていても無視を決め込んだ。

静かに家を出て待ち合わせ場所の駅まで向かうと本日は白井の方が先に到着していた。

「おまたせ」

少し駆け足で白井の元まで向かうと軽く手を挙げて挨拶をする。

「全然待ってないですよ。私も一本前の電車で来たところですから」

白井は微笑みを絶やさずに僕を暖かく迎え入れる。

「それなら良かった。早速行こうか」

「はい」

そこから二人揃って目的地である水族館に向けて歩き出す。

駅からさほど遠くない水族館の前でチケットを購入するとそのまま中に入っていく。

「パネルとともに写真はいかがですか〜」

館内に入るとすぐに何かのキャラクターとのコラボを記念したパネル写真のエリアが僕らを迎えた。

「撮っていく?」

「記念になりそうですね」

「じゃあ撮ろう」

パネル写真の列に並ぶと僕らは一眼レフで写真を撮ってもらう。

「お帰りの際に出口で撮った写真は購入できます」

スタッフの言葉に頷いて応えると僕らは奥へと進んでいく。

大きな水槽が僕らを待ち受けておりその壮大さに心も目も奪われていく。

「凄いね。同じ水槽にいて食べ合ったりしないのかな?」

僕の何気ない質問に白井はクスっと微笑んだ。

「そうですね♡」

意味深な微笑みを僕に向けてきて誂うような言葉を口にした白井に苦笑するとその後も水族館デートを楽しむのであった。


クラゲのコーナーでイルミネーションのようにキレイに輝く水槽とともにツーショットの写真を撮ったり、イルカショーを開始から終了まで思う存分に楽しんだりと時間は簡単に過ぎ去っていく。

出口で入口近くで撮った写真を購入すると二人揃って館内を出る。

昼食と夕食の間ぐらいの時間に近くのカフェで軽食を取ると長閑な時間が訪れてくる。

「この後どうしますか?」

「どうしようか…」

この後の展開として何かしらのイベントが待っているのはお互いに覚悟をしていた。

それはきっと告白という形に落ち着くと思う。

けれど僕は様々なことが心配になっていた。

僕と白井が付き合ったら夏はどの様な反応をするだろうか。

白井と付き合っているのに堺にお弁当を作ってもらうのも間違っているはずだ。

僕は身辺を整理するために白井とカフェに居るのだがスマホを手に取る。

「ちょっと時間ちょうだい」

白井はきょとんとした表情で軽く頷く。

まずは堺に向けてメッセージを送る。

「数日間でしたがお弁当を作って頂き誠にありがとうございました。ですが、明日からはもう大丈夫です。何かお礼をするので明日またコンビニへ向かいます。勝手なことを言っている自覚はあります。ですが申し訳ありません。今までありがとうございました」

メッセージを送るとすぐに返事が来る。

「彼女でも出来た?」

「出来そうなので身辺整理です」

「そう。おめでとう」

「ありがとうございます」

そこまでメッセージを送ると堺はスタンプでメッセージの終了を告げてきた。

その次に夏へとメッセージを送る。

「多分、白井さんと付き合うから。これからは朝起こしに来ないでいいよ。今までありがとうね」

「仏の顔も三度まで。私は仏じゃないから三度目でゲームオーバー。ていうか無視した時点で三度目だしね。もう終わってるよ」

意味深な夏の返事に寒気を感じるとスマホをポケットにしまう。

「ごめん。おまたせ」

眼の前の席に座る白井に声をかけると彼女は軽く微笑んでこちらを向く。

「大丈夫ですか?」

「うん。問題ないよ」

「あの…」

白井は急にもじもじとしだすと言いにくいことでもあるかのように言葉を絞り出した。

「私達…付き合いませんか?」

最終的な言葉を白井に言わせてしまい申し訳なく感じると僕は彼女の手を取る。

「もちろん。喜んで」

僕の返答に白井は嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあこの後は家に来ませんか?」

誘ってくるような白井の言葉にゴクリとつばを飲み込むと自然な流れで一つ頷くのであった。


今日、僕は童貞を捨てることになるのであろうか…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る