第9話放課後デート。次は無し…
放課後を迎える頃。
夏は僕の席まで訪れると真っ黒な瞳でこちらを覗いていた。
「どうした?」
どうにか言葉を口にして応えると彼女は静かに一言。
「行っちゃダメだからね?」
「何が?」
しらばっくれる態度を取ると彼女は僕の方へとグイッと身体を近づけてくる。
「白井さんとデートなんでしょ?ダメだから」
「いや…もう決定事項だから」
「関係ないし」
「ごめん。夏の頼みでも無理だわ」
はっきりと拒絶の言葉を口にすると夏は悟ったような表情を浮かべて頷く。
「どうなっても知らないから」
「怖いこと言うなよ」
「裏切り者の末路って知ってる?」
「だからやめろって」
「………」
夏はそのまま無言で僕の席を離れると自席に向かう。
そのままHRが始まり、数分後には放課後がやってくるのであった。
「日向さん。大丈夫でしたか?かなり怒っているみたいでしたけど…」
放課後の映画デートのために校舎を白井と二人で歩いていると彼女は心配そうに口を開く。
「問題ないよ。ちょっと不機嫌なだけだから。嫌なことでも重なっただけだよ」
「そうでしょうか…」
白井は心配事が払拭できないような表情を浮かべていたが僕が追加で口を開いてそれは収まることとなる。
「折角のデートなんだから楽しもうよ。夏のことは一旦置いておこう」
「デートと言ってくれるんですか!?それなら十分楽しみたいです!」
「うん。そうしよう。こんな機会、滅多に無いんだろうから」
「無いんですか?それは寂しいです…」
「いや、白井さんが良いならいつでもデートしたいけど…」
「本当に…?」
それに頷いて応えると僕らはいい雰囲気に包まれた状態で映画館に入っていく。
チケットを二枚買いポップコーンと飲み物をお互いに買うと入場する。
「楽しみですね」
席に着くと白井は小声で僕に語りかけてきて、それに頷いて応える。
「終わったら感想言い合いましょう」
「そうだね。そろそろ始まるよ」
映画館のCMが流れてきてそれに目を奪われていると映画は唐突に始まる。
そこから二時間近くの上映時間が過ぎていくと僕らは映画館を出ていくのであった。
「今回もアクションすごかったですね!」
シリーズ物の映画でアクションに力を入れている映画なため見せ場的なシーンがいくつも存在していた。
「主役の役者さんってスタント無しなんでしょ?やばいよね」
有名な話で白井もそのことを知っていたようで目を輝かせていた。
「本当に凄いですよね!十代の子供並みの身軽さでパワーは大人!みたいな感じで!本当に強そうでした!」
「味方だったらいつでも心強いよね」
「わかります!本当に楽しかったです!」
僕らは映画館を抜けると駅までの道中で感想を言い合っていた。
しばらく歩いて駅まで到着すると白井は何かを伝えようとしているようでモジモジしている。
「あの…」
「ん?」
やっとの思いで口を開いた白井に何でも無いようにして返答すると彼女は意を決したように口を開く。
「今週の休日もデートしてくれませんか?」
「もちろん良いよ。行きたいところ考えておくね」
「良かった…私も考えておきます。じゃあまた明日」
白井はそれだけ言うと電車に乗り込んで帰路に就くのであった。
駅を離れると自宅まで歩いて向かう。
暗くなった街中でも出来るだけ明るい場所を探して帰宅していた。
警戒心が解けないからだ。
やけに静かに思える今夜は少しだけ不気味な気がしてならなかった。
「光…」
唐突に後ろから声が聞こえてきて振り返るとやはりと言うべきか、夏の姿があった。
「なんだよ。驚かすなよ」
「ねぇ…後は無いからね?」
「何がだよ…」
「仏の顔も三度までだから」
「悪いことなんてしてないだろ」
「ふぅ〜ん。そういう態度なら知らないけど」
「脅かすのやめてくれよ」
「脅かしてないよ。警告してるだけ」
「そういうのもやめてくれ」
しっかりと拒絶の言葉を口にするが夏は受け入れてくれそうもなかった。
僕らはお互いの自宅に帰っていく。
一人残された室内でスマホが震えた。
「今日は本当に楽しかったです。また今週の休日のデートも楽しみにしておきますね♡」
そのメッセージに返事を送ると今後のことを考えた。
どのようにすれば夏の起こそうとしている行動を阻止できるのであろうかと思考を巡らせるのであった。
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