第8話覚悟を固める
翌日のコンビニにて堺は本当に僕にお弁当箱を手渡してくる。
「今日も一日頑張ってね♡」
堺の言葉に上手に返事が出来たかは定かではない。
ただ隣で僕らの様子を伺っている夏に気が取られてしまう。
夏は僕よりも一足先に店の外に出て購入したアイスの包装を破っていた。
「彼女不機嫌になっちゃったかな?」
「恋人じゃないですし不機嫌になられても困りますよ」
「そんなこと言ってるとその内、見捨てられちゃうかもよ?」
「かもですね。気を付けておきます」
「はい。じゃあ明日の朝にでもお弁当箱返してね?洗わなくていいから」
「いえいえ。ちゃんと洗って返しますから。ありがとうございました」
感謝の言葉を告げると夏よりも遅れて店の外に出る。
夏は無言の状態でアイスに齧り付いており、まさに不機嫌を絵に描いたような状態だった。
「なんでそんなに機嫌悪そうなんだよ」
「別に。浮気者に答えることなんてなにもないけど」
「浮気者って…僕らは付き合ってないだろ…」
「でも…そういう様なものだもん」
「そういう様なって…」
言葉に詰まる僕を他所に夏はアイスをガリガリと噛んでいく。
「そんなにストレスなのか?」
「なんで?」
「何かで読んだけど。氷を噛むのってストレス解消になるらしい」
「ふぅ〜ん。それならそれだけストレスなんだね」
「そういう言い方やめてくれよ。束縛されるようなことは好きじゃないんだ」
「そんなことしているつもりはないけど?」
夏の言葉に肩を竦めて応えるとそのまま真っすぐに学校へと向かうのであった。
「白井さん。おはよう。今日も早いんだね」
家から学校まで近い僕らは、ある程度遅れて家を出ても走れば間に合ったりする距離だった。
けれど白井はそうではない。
電車に乗ってバスに乗って通学しているためなかなかに時間を取られる。
けれど彼女はいつも誰よりも早く学校に来ては自席で読書をしている。
「おはようございます。藤田くんはいつもどおりの時間ですね」
「僕が来る時間なんて知ってたの?」
「あ…いえ…何となくで答えました…」
白井は歯切れの悪い言葉を口にして一つ咳払いをしてみせた。
「そうだ。そう言えば、藤田くんは映画は好きですか?」
唐突な質問に軽く首を傾げると答えを返す。
「えっと…ジャンルに寄るかな」
「どの様なジャンルは観ないんですか?」
「うーん。ホラーと恋愛系かな?」
「じゃあ丁度良かったです。今日公開のアクション映画があるんですけど…もし良かったら放課後に観に行きませんか?」
「是非。でも僕でいいの?」
「何言ってるんですか。誘っているのは私なんですよ?行きたい人しか誘いませんよ」
「他に誰か誘うの?」
僕の言葉に白井は少しだけ恥ずかしそうに首を左右に振る。
それを見た僕はゴクリとつばを飲み込んで少なからず何かしらの覚悟を固めるのであった。
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