第7話変わりゆく関係性
休みが開けた翌日の月曜日のこと。
本日は夏のいたずらで起きるわけではなく、自然と目を覚ますこととなる。
いや、自然とというのは少し語弊があるだろう。
昨日の堺とのキスが頭から離れずに悶々とした状態で目を覚ましたのだ。
自分の心の中で燻っている感情を内省してみたところ。
僕は堺を好きなのか?
それはまだ断定できない。
しかしながら昨日の出来事は確実に頭から離れてはくれなかった。
自室で目を覚まして数分間考え事をしているとドアが開いた。
「あれ?今日は早起き?」
いつものように夏が自室に入ってきて少しだけ驚いた表情を浮かべていた。
「あぁ…うん」
「何かあった?」
目を細めて僕のことを疑うような何処か心配しているような表情を浮かべている。
夏の言葉に無言で首を左右に振る。
「そう。今日は早く起きれたんだからゆっくり朝ご飯食べてから行こう?」
「そうだね。着替えるからリビングで待ってて」
夏は仕方無さそうに頷くと部屋から出ていくのであった。
母親の作った朝食を食べてから夏と共に自宅を出ていくと登下校路を歩いていく。
本日もいつものようにコンビニへと入っていくと昼食のおにぎりを購入するためにレジに向かった。
「おはよう。いつもおにぎりばかりじゃ栄養偏るよ?」
「おはようございます。手っ取り早く食事ができると思うと…つい」
「明日から私が作ってあげようか?料理上手なんだよ?」
堺のぶっ込んだ発言に隣に立っている夏は怪訝な表情を浮かべている。
「でも…」
言葉に詰まっている僕に違和感を感じたであろう夏はこちらを睨みつけてくる。
「遠慮しないで。私達の仲でしょ?」
意味深な言葉を口にした堺に目を丸くして表情を白黒させている夏は僕らのことを交互に見つめていた。
「じゃあ…お願いしてもいいですか…?」
心のなかで少なからず堺に対して好意を抱いているであろう僕は彼女の提案を受け入れる。
「わかった。明日からもコンビニには寄ってくれる?そこで渡すから」
「はい。お世話になります」
堺はレジの作業を終えるとコンビニ袋をこちらに渡してくる。
「ありがとうございます」
「はい。いってらっしゃい」
彼女とのやり取りを終えると僕らは揃って店の外へと出る。
「ねぇ…」
いつもより声のトーンを落とした夏の表情を見るのも少しだけ怖かったが見るしか無い状況だった。
「ん?」
内心ではビクビクしていたが平静さを繕って返事をする。
「やっぱり何かあったでしょ?」
「何も」
「嘘」
未だに僕を疑っている夏のことを無視するように前を向くと学校へと続く一直線の道をただ歩く。
無言の状態で何かを企んでいるような夏に若干の恐怖を抱くのであった。
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