第4話動物園デート

待ちに待った土曜日が訪れると朝早くに目を覚まして身支度を整える。

家を出ると近所のコンビニへと向かい飲み物とタブレットを購入するためにレジへと向かう。

「あれ?今日はいつもの娘と一緒じゃないんだ?」

レジにはいつものように堺が立っており接客をしていた。

「はい。今日は出かける予定がありまして」

「そうなんだ…その相手はいつもの娘じゃないの?」

「まぁ。そうですね」

少しだけ歯切れ悪く答えると堺は複雑な表情を浮かべて軽く微笑んだ。

「モテるんだね」

意味深な口調で声のトーンを少しだけ落とした堺に首を傾げていると彼女は何でも無いように首を左右に振った。

「なんでも無いけど…その…デートに行くってことかな?」

「まだそう言えるかはわからないですけど…。一緒に動物園へ行くって感じです」

「これから?何処の?」

根掘り葉掘り質問を繰り返してくる堺に答えると彼女は数回頷く。

接客が終わった彼女はレジ袋を僕に手渡して笑顔を向ける。

「じゃあ楽しんできてね」

「ありがとうございます」

軽く会釈をするとそのまま駅まで向けて歩き出すのであった。


待ち合わせ時間の十分前に駅前の時計台の下で白井を待っていると彼女は僕を見つけてこちらに向かってきた。

「おはようございます。今日は少し暑いですね」

水色のワンピースに身を包んだ白井を見て僕の心は少なからず躍っていた。

少し大人びていて、けれど年相応な彼女の格好に目を奪われていると白井は恥ずかしそうな表情を浮かべていた。

「私の服…変ですか?」

その言葉に必死で首を左右に振ると否定の言葉を口にする。

「そんなこと無いよ。凄く似合っていて…思わず目を奪われてた」

「本当ですか!?それなら嬉しいです」

「うん。じゃあ早速向かおうか」

白井はそれに頷くと僕らは電車に乗り込んで目的地に向かう。

休日の電車内は少しだけ空いており僕らは席に座ることが出来た。

席に腰掛けて小声で話をしていると何処かから視線のようなものを感じて車内を見渡した。

「どうしたんですか?」

僕の様子が気になったのか白井はこちらに視線を寄越す。

「いや…誰かに見られているような…変な感じがしたんだ」

「そうなんですか?でも私達のような一般人を見張るような人はいないと思いますけど?」

「そう…だよね。気の所為だった。ごめん」

謝罪の言葉を口にするとその後も雑談をしながら動物園の最寄り駅まで向かうのであった。


動物園デートが始まると白井は目の色を変えて動物を鑑賞していた。

「見てください!ライオンですよ!」

「ゾウを見れるなんて!今日はラッキーですよ!」

「お猿さんはいつ見ても可愛いですよね!」

「フラミンゴが水面で片足立ちの理由を知っていますか?」

「見てください!ホワイトタイガーです!かっこいい〜!」

この様にいつもの白井のイメージからは、かけ離れた彼女の一面を知ることが出来て僕の表情はほころんでいた。

夕方近くまで広い動物園を見て回っている間も僕は少なからず誰かの視線を感じていた。

しかも一つでは無く複数の…。

見に覚えのあるような視線に少しだけ恐怖を感じたが現状は何もされてはいない。

それなのであまり気にせずに十九時辺りまでデートを楽しむのであった。


「また誘っても良いですか?今日が凄く楽しかったので」

「うん。次は別の場所にも行きたいな」

「はい。是非。私もそう思っていた所です」

「良かった。じゃあここで失礼するね」

「はい。送ってくれてありがとうございました」

白井の家の前で彼女と別れると自宅に向けて歩き出す。

歩き出してしばらくしたところで後ろから足音が聞こえてきて振り返った。

「こんばんは」

「やっぱり…夏だったか」

「何が?」

「しらばっくれるなよ。ミカレモは?」

「先に帰ってもらった」

「ストーカーするなよ」

「別に。妹たちを動物園に連れて行っただけだし」

「まぁ…良いけどさ」

「それで?楽しかったの?」

それに軽く頷くと自宅までの帰路に就く。

「気を付けたほうが良いよ?」

「何に?」

「私達以外にもストーキングしている人いたから」

「え?誰?」

「それは教えないけど」

「教えてよ」

「嫌だ。私を裏切るような光には何も教えない」

「勉強教えてあげただろ?」

「それとこれとは話が違う」

夏の言葉に嘆息すると僕らはそのまま帰宅していくのであった。


ここから新たな地雷系女子を加えた物語は続こうとしている。

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