第3話地雷系にカテゴライズ

「光ってさ〜…白井さんみたいな娘がタイプでしょ?」

下校路で夏と共に隣り合って歩いていると彼女は唐突に核心を突くような言葉を口にする。

「なんでそう思うの?」

「ん?だって今まで好きになった女優とかアイドルと同じ様な系統だし」

「同じ様な系統?」

「清楚ってこと」

夏の投げやりな言葉に軽く頷くと話を切り替えるようにして口を開く。

「今回のテスト。やばそうなの?」

あからさまに話題をシフトした僕に夏は冷ややかな視線を送ると目を細めていた。

「そんなに話を変えたいの?ガチじゃん…」

「何が…?」

「白井さんのこと好きなんだね」

そこで言葉に詰まるが何かしらの否定にも似た言葉を口にしようと思考を回転させていた。

「まだそこまでいってないけど…確かに白井さんはタイプど真ん中だよ」

「ふぅ〜ん。まだ好きじゃないのね?」

それに頷いて応えるが夏の表情は晴れやかなものに変わることはなかった。

「それで?土曜日にデート?これからデートを重ねて恋人になっていくって感じ?」

「僕から誘ったわけじゃないし、これからどの様に関係が変化するのかなんて誰にもわからないよ」

「そうだけど…じゃあ白井さんが光に気があるの?」

「知らない。どんな意図があって休日に遊びに誘われたのかもわからないよ」

夏は数回頷くと話を終えるように一度パンッと手を叩いた。

「そうなの。今回のテストヤバいかも。このままじゃ留年しちゃう…」

急に話題を変更して先程までの会話は無かったことのようにした夏は少し前の僕の問いかけに答えを返した。

「夏の切り替え…怖すぎだろ…。教えられるところは手伝うけど…」

「ホント!?じゃあ今日から教えて?」

急に甘えた態度を取って猫を被った夏に嘆息すると仕方なく頷く。

「何処で勉強する?」

「うちは?」

「夏の家か…。ミカレモも居るの?」

「当然居るよ。妹なんだから」

「そっかぁ…」

「何?ミカンとレモンが苦手なの?」

「少しね」

「じゃあ光の家にしようよ」

「まぁ良いけど…」

夏の言葉に頷くと僕の家に向けて二人で歩いて向かうのであった。


家では母親が家事を行っており、いつものように夏を歓迎していた。

夏と僕の母親はかなり距離が近く信頼関係をしっかりと築いていた。

毎朝、僕を起こしに来てくれるのもポイントが高いらしい。

何よりも今まで何も間違いを起こしていない夏に母親は警戒心がまるで無いようだった。

それ故に異性の幼馴染だろうと簡単に家に上げることを許可して二人きりの状態にしても何も心配をしていない様子だった。

夏の上手いところは僕の家で何かをしようとしている気配を一切出さないところだ。

自分は無害だとでも言うように良い子の皮を被っている。

本日も僕の部屋でテスト勉強に励むと夕食を共にして帰宅するだけだった。

「夏は本当に良い子ね。あんな幼馴染が当然のように居る光は勝ち組みたいなものよ。学校で羨ましがられない?」

「どうかな。夏を好きなやつはいっぱい居ると思うけど」

「今のうちに離さないようにしておきなさい。大人になっても夏は可愛いはずだから」

「そう…」

母親の言葉に適当に相槌を打つと僕は自室へと戻っていく。

だけど僕は少なくとも知っている。

夏が少しだけ厄介な性格をしていることを。

それが地雷系と呼ばれる属性にカテゴライズされているのもネットで検索して覚えた。

夏の逆鱗に触れないように、彼女が僕に怒りを向けないように細心の注意を払いながら白井との関係を進めていこうと思うのであった。

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