第7話 破城王女
城の城壁を丸ごと使った巨大な腕を使い、地響きを立てながら前に前進してくる元城、城ゴーレムは大きさの分だけ進む速度も速い。
そのまま戦えば勇者は兎も角として王子が危ないと考えたミリアは、二人を抱えて一気に飛び下がると降ろしたアリアにアルスを預ける。
「アリア、アルスを任せるです」
「任されたよ、ミリア」
「えっ? 逃……」
二人は一言で通じ合うと勇者が肩に俵持ちにして、不思議そうな顔で何か言おうとした王子を抱えて下がっていく。
王子を追って進もうとする城ゴーレムに立ち塞がるのは白いドレスの王女様。
すると城の上にてらてらと光る銀色の骸骨が現れて王女様に声をかける。
『お前の大活躍は石像兵越しに見ていたぞ。 我が名は四天王シルバージェネラル! 私は油断しない。 安全確実な手を使う! 』
前進するのを辞めた城ゴーレムは王女に地響きを立てて持ち上げた城壁の手を真っ直ぐに向けると、その先端から次々と自分を構成する石レンガを撃ち放ち始める。
『フハハ! お前を片づけた後、ゆっくりと王子を確保するとしよう』
それに対してミリアは足を肩幅に開いて、金色の闘気を立ち昇らせ始める。
次々と殺到する石レンガがミリアの周りの大地を抉っていくが、ミリアは微動だにせずに闘気を巨大化させていく。
強大な闘気に石レンガが逸らされたのだ!
「片づけられるのはお前です!」
闘気を纏ったミリアは空を駆けて、銀色の骸骨に突っ込んでいく!
『ふざけるな! 何だその闘気の出力は! 』
銀色の骸骨は慌てて城ゴーレムに腕をクロスさせて守らせるが、拳を振り上げたミリアはそのまま振り下ろす。
「破ァです!!!!」
束ねられた城壁に巨大化された闘気を込めた拳が炸裂する!
拳の当たった城壁は金色の光を放って崩壊していき、金色の光は腕から全身へと侵食して、城は光を放って崩れていく。
その上に居たシルバージェネラルも体に金色の光が沁み込んでボロボロと崩壊していく。
『私を倒しても、他の四天王が王子を狙う! お前たちに安寧は訪れないとガッ! 』
負け惜しみを言いながら崩壊する銀色骸骨は、ミリアの拳でぶっ飛ばされた。
「魔王軍はぶっ飛ばすと決めていたから丁度いいです!」
お嫁さんになることも大事だが、決めたことをやり通すのもお母様との約束だ。
戦いの終わりと遠くから見届けた勇者と、肩に抱えられた王子がミリアの元に戻ってくる。
肩に抱えた王子を下ろすと勇者は王女を労わる。
「お疲れ様。 大物だったね」
「困ったです。 どう片付ければいいです? 」
「個人で片づける範疇を超えてると思うよ?」
戦いが終わって片づけをしようと考えた王女は周囲を見渡してその惨状に困って、王子は諦める事を促す。
城があった場所には地下ごと持ち上がったのか大穴が空いているし、連打された石レンガは大地を掘り返していて巨大なモグラが通ったかのような跡が残っている。
「これは……諦めて王様に四天王が悪かったって話そう」
勇者はそう締めくくった。
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