第6話 粉砕王女
階段を上ってきた3人は一変した景色に驚愕した。
石造りの城内が所々崩れて、代わりに石の人型が徘徊しているのだ!
「これは……奴の、ここを任されている四天王の能力だ」
アルス王子は攫われたときに見た事のある光景に震えて怯える。
「邪魔をするなら全部ぶっ飛ばして行くまでの事です」
王子の様子に怒りを思い出した王女は、両手に闘気を集中させ輝かせて徘徊する石の人型、ゴーレムへと歩みを進めていく。
「ミリア! 相手は生き物じゃなくて石の塊だ! 素手では無茶だよ! 」
「大丈夫、絶対にぶっ飛ばすです」
心配して静止の声を上げるアルスに微笑んで答えたミリアはそのまま進んでいく。
徘徊する人型はミリアを見つけると、一斉に顔に当たる部分にある『T』の形の輝く模様を向けて迫っていき、ついに一番近くに居た石の人型と、ドレス姿の王女が接敵する。
「破ァです!」
石の人型がその重さを活かしてミリアを押しつぶそうと、両手を広げて覆いかぶされば、その重さを無視したかのような拳によって吹き飛ばされて、後詰めの仲間にぶつかって砕け瓦礫となる。
闘気の乗せられた一撃は巨石をもぶっ飛ばすのだ!
「石像を打ち砕いた!?」
「ただの石みたいだから僕の出番は無いかな?」
石像を苦も無く瓦礫にした王女に王子が驚く横で飛んで来た瓦礫を拾い上げたアリアが浄化の雷で瓦礫を輝かせ、白く燃え始めないので魔物では無い事を証明した。
「だったら、ぶっ飛ばす場所を揃えるです……!」
それを聞いたお片付け上手のミリアは、次々と恐れも知らずに向かって来る石像を最初の瓦礫の場所へぶっ飛ばす。
「ウララララァです!!!」
パンチの度にぶっ飛ばされる石像がぶつかり砕け散って最初の瓦礫が粉砕される頃には、石像の増援は尽きて勇者たちの周りには静寂が訪れた。
散らかした後ちゃんとお片付けをするのは、お母様との約束だ。
城の壁が石像の材料になった事で、開いた穴から城の外に出てきたミリアは地面を殴ると穴をあけて、粉砕された瓦礫を闘気で固めて穴に放り投げた。
王女に続いて穴から出て、その様子を見た王子が疑問の声を漏らすと、勇者が王女の良い所を王子に教えてあげる。
「ミリアは一体何を……? 」
「散らかしたら片づけをするんだって」
「散らかし? 片づけ? 」
「ミリアは強いだけじゃなくて母親との約束を守る良い子なんだ」
「約束を守るのは良い事だね」
「僕もそう思う」
ほっこりしている二人に震脚で穴を崩して埋める事で、片づけを終わらせて帰ってきたミリアは首を傾けて問う。
「二人ともどうしたんです?」
「ミリアの事を勇者に聞いていたんだ」
「ミリアの良い所を王子に教えていたんだよ」
「アリア、何だか照れるです」
頬を赤らめたミリアは二人から顔を逸らして恥ずかしがるが、二人の背後の光景を見てその碧眼を鋭くする。
出てきた城壁の穴が塞がり、そのまま城壁が持ち上がっていくのだ!
二人を抱えてその場から一気に飛び退いた王女は、遠くからその全体を確認する。
「とっても大きいです!」
「これには僕も参ったね」
「これは……なんと……」
その姿を見て王女は大きさに驚き、勇者は両手を上げて王子は言葉を失った。
三人の前で城が持ち上がり城壁の両手を地に付いてこちらへと這い寄ってくる姿は絶壁が迫るような圧迫感がある。
上に突き出た塔には城の中に居たのと同じ『T』の輝く模様がありゴーレムだ。
城その物がゴーレムとなって襲い掛かってきた!
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