〜勇者の力〜 四天王をぶっ飛ばす
第5話 急襲王女
抱き上げた婚約者の顔を近くで見つめるミリア、王子の前髪の隙間から見える真紅の目は吸い込まれそうなほど美しい。
「じ、自分の足で歩けるよ!」
実際に顔が吸い寄せられて額のぶつかりそうな王女に、顔を赤くした王子が主張すると、素直にミリアは王子を下ろした。
「牢屋に入っていたのに、アルス王子は元気です」
「早く救助に来てくれたお陰だよ。 ありがとう」
首を傾げる王女へ、王子は少し早口で感謝と共に無事の理由を伝える。
無事なのは道中にアリアの話していた攫われた原因も合わさっての事だろう。
「お二人共、無事を喜ぶのはここを脱出してからにしよう! どうやら、増援が来たみたいだ」
黙って二人の成り行きを眺めていたアリアが声を上げて注意を促すと、地下牢へ降りてきた階段から重量物が降りてくる足音が聞こえてくる。
降りてきたのは二匹の剣と盾を持つ重厚な鎧を着たオークで、その姿はまるで豚の騎士だ。
豚の騎士たちはミリア達の前に階段を塞ぐように立ち塞がった。
「私達の邪魔をするなら、ぶっ飛ばすです!」
婚約者を前にやる気の高まったミリアは豚の騎士に挑みかかる。
傍から見るとドレス姿の王女様が完全武装の騎士に突っ込んでいく図だ。
「ミリア!」
「まあまあ落ち着いて、ミリアは強いからね」
思わず声を上げてしまう王子を宥める勇者をよそに、衝撃的な展開が巻き起こる。
「行くです!」
拳を握ったミリアは足に闘気を集中して素早く飛び上がると地下牢の天井を蹴って騎士たちの頭上から急襲をかけたのだ。
突然の跳躍に、兜のせいで目立つドレス姿が消えたようにしか見えなかった豚の騎士は左右を見て慌てているが、そんな隙を見逃すミリアではない。
闘気を集中した拳は光り輝き、金属音を響かせてオークの頭を兜ごと鎧に沈めてしまった!
気が付いた相方の豚の騎士が盾を構え、ミリアの落下予定位置へシールドチャージを敢行するが、それに対して空中のミリアは拳を振りかぶって迎撃の構えだ。
衝突の瞬間、ミリアの気合の叫びが地下室に響く!
「破ァです!!!」
空中の小さな王女と駆ける大きな鎧騎士の衝突は、物理法則を無視したかの様にミリアへ軍配が上がり、階段にぶっ飛ばされた豚の騎士は盾と鎧は砕け散り白目を剥いている。
衝突の瞬間に高められた闘気に全身を打ちつけられたのだ!
階段に向かって王女が盾と首なし鎧騎士を放り投げるとアリアにお願いをする。
「アリア、頼むのです」
「今日は大量だな~」
微笑みながら豚騎士の剣を拾ったアリアは、それに雷を纏わせて振り下ろす。
「サンダーブレイクだ!」
ボコボコになった鎧騎士たちは、アリアの浄化の雷に打たれて白く燃え消えていく。
「ふ、二人とも強いんだね?」
そのまま剣に布を巻いて沢山剣の入った背嚢に突っ込むアリアは答える。
「僕はそれなりだね」
手を払って清々しそうに微笑むミリアも答える。
「私もそれなりです」
目を白黒させて立ち尽くす王子を尻目に、ここにはもう用が無いと階段へ上っていく二人。
「王子、危ないのでここから出るです」
「王子は自分の足で歩けるんだよね?」
急ぐミリアと、からかい半分のアリアに急かされて、アルスは急ぎ二人について行く。
「ちょっと待って、今行くよ!」
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