第4話 攻城王女

 勇者達が動き出す!


 と、その前に後片付けをするのがお母様との約束だ。

 ミリアは焼かれたクレーターを覗き込み頷く。


「流石はアリア、凄く便利な闘気です!」


 闘気にはそれぞれ個性があるのだ!


 勇者アリアの闘気は放出すると浄化の雷と化して魔の者、魔物等の存在を消し去る。

 三人衆が浄化されて穴の中は何も無い為、震脚で穴を崩して後は火を消したら、お片付けはおしまいだ


「無尽蔵なミリアの闘気に比べたら、僕は普通さ」


 王女ミリアは強大な闘気を保有していて、連戦後に普通なら闘気が枯渇するような空中戦をしたのに、今度は消火活動をしている。


 震脚での消火を終えたミリアが、アリアに尋ねる。


「アリアは王子の居場所を知っているです? 教えて欲しいです」


 城からすぐに飛び出してきたミリアが頼れるのは救出に出発したと聞いているアリアだけだ。


「良いよ、僕についてきて」


 ミリアの願いにお安い御用だと勇者は駆けだす。


 道中で勇者が語るには、王子を攫ったのは四天王を名乗る魔王軍の幹部の一人で、王子の傷を癒す特性を持つ闘気に目を付けて攫ったという話だ。


「王子の居場所は、少し街道を外れた場所なんだ」

「それは都合が良いです」


 二人は街道を外れて手加減が不要になると、遠慮なく地面を砕き全力疾走して、道なき道を谷を飛び越え魔物を跳ね飛ばして進む。


「あそこが王子の攫われた城です?」


 勇者の先導で辿り着いた城は魔王軍を名乗る連中が整備した物で、元々はミリアの国が不要になって放棄した城だ。 


 王女は敵の手に落ちた城に頓着することは無く、一気に重厚な城門に近づいて拳を振り上げる。


「破ァです!!!」

 

 振り上げた拳に闘気を集中してマスターキーを撃ち込むと、金属で補強された城門が蝶番ごと吹き飛んで迎え入れてくれる。


「ミリアのノックはシゲキ的だよね」

「私の邪魔をしたのが悪いです」


 正面から悠々と城に侵入した二人を歓迎するのは、魔王軍を名乗る連中に支配された魔物達、豚の顔をした人型で人間よりも大きいオークと呼ばれる魔の者。


 城の広間で剣を握ったオーク達が侵入者を血祭りにあげようと迫りくるが、屋内で勇者に挑むのは自殺行為だ。


「サンダーブレイクだ!」


 迎撃に勇者の振るう剣から放たれた雷が打つと、打たれた魔の者達は白い炎を噴き上げて消えて行く。


 魔の者が存在を浄化されたのだ!


 密集すると危ないと散開すれば、それは王女に対して数の利を放棄するに近しい愚策だ。


「私の邪魔をするなです!」


 散開したオーク達に近づいた王女は、振り上げられる剣を無視して懐に飛び込み、素早いジャブを胸に食らわせる。


 その一撃で王女よりも大きなオークが壁に叩きつけられ、その豚顔はピクリとも動かず白目を剥いていた。


 浸透した闘気で心臓を破壊されたのだ!

 

 意味不明な死を見たオーク達に動揺が走る。


 その隙を見逃すミリアでは無く、次々と後を追わせて広間は白目オークで埋め尽くされた。


 室内を散らかしてしまったが大丈夫だ。


 お母様との約束である後片付けはアリアのお陰で一箇所に纏めるだけで済む。


「アリアお願いするです」

「塵取りじゃ無いよミリア、サンダーブレイク……」


 王女のお願いを聞いた勇者の放つ、ちょっと元気のない雷でもしっかりと効力は発揮されて魔の者だけを浄化した。


 オークの居なくなった無人の城を二人が進んでいく。


「王子は何処に居るんです?」

「多分、地下牢かな」


 久し振りの対面に待ち切れず聞く王女が、勇者の言う通り城の地下牢に行けば、何度か会ったことのある銀髪の王子アルスが中で俯いている。


「アルス王子、助けに来たです!」


 ミリアの声に顔を上げた王子だが表情を曇らせた。


「ミリア、無理だよ。 牢の鍵は四天王が持っているんだ……」


 続けて救援の感謝を伝えようとした王子だが、王女は太い金属製の牢をぐにゃりと曲げて救い出す。


「王子を助けたです!」


 救い出されて王女の腕の中に収まった王子は、眼の前で起こった事に目を白黒させている。

 



 ――あとがき――

 王子を助け出した王女の先に待ち受けるものとは!?


 ここまで読んで貰えて、とても嬉しいです。 ありがとうございます!

 

 執筆の励みとなりますので★やフォロー、応援をよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る