第3話 空戦王女

 石畳の脇を草が茂る街道を風となって駆け抜けて、前方を見つめている王女の鋭い目が異常を捉えた。


 街も何もないはずの場所から、黒煙が上がっている。


 火事だ!


 何が原因かは分からないが、火事が広がり過ぎては困る人が出てくるので、火を消しに行こうと黒煙の下へ急いで向かう。


「あそこに居るのはアリアです? 」


 急行する王女の碧眼に映ったのは、盾を構えて空からの連続攻撃を耐え凌ぐ蒼い眼の友人アリアの姿だった。


『勇者と言えども我等魔王軍! 』

『黒翼三人衆には敵うまい! 』

『このまま、なぶり殺しにしてくれるわ!! 』


 青い空で非常に目立つ黒い翼の生えた三人組が、燃える草原付近の街道に立つ黒髪のアリアに名乗りを上げている。


「嫌な相手だ。 ずっと空から火矢なんて」

 名乗られているアリアは、ずるい攻撃に困り顔だ。


 名乗っている間も卑怯にも空を飛んでいた三人衆は、追加の火矢を射掛けて街道ごと勇者を火炙りにしようとする。


「困ってる人を、友を助けるです」


 お母様との約束にちょこっとだけ私情を挟んで、ミリアは燃え上がる街道へ友の救援に向かう。


 勇者の下へ行く白いドレスの王女が、一歩ごとに周辺の炎と焼けた草原を吹き飛ばして近づいていく。


 震脚で炎を消火しているのだ!


『そのような格好で我ら黒翼三人衆の前に出るとは!』

『猪口才な真似を!』

『お前から先に始末してくれるわ!』

 

 それに気が付いた三人衆は、草原にドレスを着て現れた妙な人間を始末をしようと、ミリアに火矢を射掛けるが王女の動きを捉えることが出来ず、街道を新たな炎で彩るだけの結果になった。


 通り道の炎をぶっ飛ばして、救援に到着したドレス姿のミリアは、膝をつく鎧を着込んだアリアに手を差し伸べる。


「友よ、手伝いは要るです?」

「頼む友よ、君の力が必要だ」


 差し伸べられた手を掴んだ勇者は、力を振り絞って立ち上がった。


「高いところに居る相手は、高い所に行ってぶっ飛ばすです!」

 ミリアは駆け出して、そのまま空へと駆け上がっていく。


 闘気で足場を作ったのだ!


 空を駆け上ってくる王女に三人衆は驚き戸惑っている。


『我らの空に翼無き者が来る!?』

『翼無くどうして飛んでいる!?』

『我らは夢でも見ているのか!?』


 あまりの事態に混乱して隙を晒す三人衆へ、空を蹴って王女が突っ込んでいく。


 当然そんな隙を見逃すミリアでは無く、足場を力強く蹴って三人衆よりも空高く跳び上がると、拳を握って天を蹴り三人衆へ急降下する。


「破ァです!」


 巨大な闘気纏う拳の急降下爆撃が三人衆を襲う!


『『『ぐわー!』』』


 ぶっ飛ばされた三人衆は勢いよく墜落して草原に激突、クレーターを作り出した。


「待ってました!」


 待っていたのは勇者アリア、剣に雷を纏わせ三人衆クレーターの底へ振り下ろす。


「サンダーブレイクだ!」


 剣に纏わり付く雷が撃ち出されて、その一撃はクレーター内を白く焼き払った!


 残心に構える勇者の隣に王女が着陸すると、笑顔でハイタッチして再開を喜ぶ。


「アリア、久しぶりです」

「ミリア、久しぶりだね」


 勇者と拳聖は合流して、打倒魔王軍へ動き出す!







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